苫小牧での別れ

 ほとんど走りっぱなしで午後4時、苫小牧着。
 フェリーもおさえることができたし、ワイフの宿も確保できた。ただ午後5時半から乗船開始なのでほとんど時間がない。フェリーターミナルで食事をした。
「ぜったいウニ丼食ってこいよ」
「わかった」
「何があってもあきらめるな。特命ウニ丼ミッションだ」
「うん」
 フェリーの夜はミニシアターで「世界の中心で愛を叫ぶ」を観た。マドカには何枚か硬貨を渡し、適当に遊んでこいと言っておいた。マリモの財布に硬貨をだいじそうに入れたものの、生まれてからひとりでぶらぶらしたことのないマドカは最初はかなり尻込みしていた。が、旅の力に後押しされたのだろう。やがてどこかに消えていった。
 映画の途中でビールを買いに自販機に行くと、廊下でばったり浴衣姿のマドカに会った。よう、と言ったら、はーいと含羞む。妙に新鮮だった。
 マドカの行動をこっそり見ていると、ショップの前で浴衣の裾をたくしこんでしゃがみ、マリモの財布から一枚一枚硬貨を出してフロアーに並べている。友だちへのお土産でも買おうとしているのだろう。すごく慎重に金を数えている。500円玉と100円玉の区別がやっとつく程度だが、間違えても親切にしてくれる人ばかりなのに、きちんとできないといやなのだろう。
 
●走行:328km
●食ったもの:鶴雅朝食バイキング、苫小牧フェリーターミナルでカレーライス