筑波サーキット12時間耐久チャリレース

 スタートは夜10時。
 今回で筑波サーキットでの耐久レースは3回目の参戦。前回は350チームのほぼ最後尾からのスタートであったが、SEMAS*1Aチームの森井店長に引っ張ってもらい、先頭集団にくらいつくというアグレッシブな経験ができた。えらい速度差でしゅらしゅらと他車をかわしながら抜けていく森井店長の後光に隠れてくっついていくのが精一杯。今回も180チーム中145番手からの後方スタート。ただし今度はSEMASの援護はない。
 レース前夜はカワサキ乗り高崎君の主催での二度目の送別会。いつもの流れで朝まで飲んだ。俺が松戸の実家にもどったのはなぜか朝9時過ぎである。午後2時まで睡眠をとり、一家で筑波サーキットへと赴いた。
 実業団鉄人部NKロケッツ*2は、今年から2チーム体制でのぞむ。社内で着実にメンバーの輪が広がっているのを感じる。充実のサポート体制で、仮眠所(テントとタープ4張り)、炊事場、食糧供給にスキなし。
 NKロケッツのチームキャプテン中川氏の指示でスターティングライダーの密命を受けた二日酔いの俺は、気合と笑いの大放出を胸に秘め145番手スタート。スタート直後に前方で落車。数台がまきこまれたが、ぎりぎり回避。しかしここでまた数台に抜かれ、いきなりやる気を失いかけたが、ここは気合と祈り。うまいこと後方発先頭狙いの2機にまぜてもらい、3機でローテーションを組みながら130機を抜く感覚はほとんどビデオゲーム。3周目の第一コーナー裏でトップ集団を捕捉。しかし少し距離がある。3機目からダンシングで抜け出る。もちろん引っ張るだけの足はないが、出るだけ出といたらあとはこのプロっぽい2機が何とかしてくれるやろね、なんて思ってるあいだに、すぐに2機が俺を抜き去り、ぐんぐんぐんぐん引っ張ってくれ、先頭集団捕捉。
 先頭集団のペースは前回の8耐よりは実質平均で5kmほど遅い。走っていても遅いと分かる。12時間の長丁場。ここで足を使っては馬鹿まるだしと、誰もが牽制モードで先頭を引っ張りたがらないのだ。気合と笑いを胸に秘めた伏兵にとっては最大のチャンス。3位位置をキープしてチャンスをうかがう。場内アナウンスでNKロケッツの名前が響きわたる。メインスタンドでの爆笑の波紋が俺を後押しする。
 5周目メインスタンド前、いっきに先頭に踊り出て笑いのカミカゼにならんとしたが、笑いに徹しきれない俺の弱さ。ついこのままの位置をキープした方がという誘惑に負け。
 6周目、このままの位置で終わったほうがというさらなる軟弱な誘惑に負け、ピットにラスト1周のサイン。刹那、先頭集団に動揺が走るのが分かった。ピットが早すぎる。勝つためには、ほどよく先頭集団が協力しあってペースを引き上げ、できるだけ長く周回をかさねることが必要だ。なのに、いきなり輪を乱す俺。
 先頭を引っ張っていた鉄フレームの足もとに元気がない。二番目も後続も牽制。第二ヘヤピンの立ち上がりから、またカマしてしまいました無限無責任ダッシュでトップ奪取、というとカッコいいけど、ほんとは、あんた最後なんだからちょっと引っ張ってよ、って感じで、無理やり先頭をやらされた感じ。まもなく抜かれる。5秒天下? 10秒天下? 先頭集団から脱力した3機が俺といっしょにピットインした。
 2走行目、3走行目と、みるみる足が棒になっていき、ペースダウン。以前なら9周から11周はまわっていたのに、ちょこちょこっと走ったらもう限界。ごめんなせえ、チームメイトのみんな。最後はロボットみたいになっていた。
 行程も半分以上を終え、夜が明ける。
 オートバイの世界ではもはや全国区となってメディアにも取り上げられるようになったオートボーイJS鴻巣社長率いる陣営が応援、というかヒヤカシに来訪。大人げたっぷりにスポーツドリンクを差し入れてくれたが、気を遣わずに次回からはどーんとビールを差し入れてほしいものである。
 朝がた、一時は雨に降られながらも午前10時、アンカーを務めたパンターニ遠藤が総合41位でゴールイン。夏の情感たっぷりのウィニングランのセレモニー。ほんと、この瞬間、今年の夏もよかったなぁって走馬灯。
 解散後はもうひとつのチームでアンカーを務めた宮川氏と相模大野で厳しい肝臓トレーニングを敢行し、小田急ロマンスカーの終電を逃し、急行で爆睡。
 目が覚めると、車内にはほとんど人がいなくて、携帯から何から床にブチまけていた。拾い集めてあわててホームに立つと、一陣の涼風に駅表示板の「おだわら」の文字。おだわらって、なんだぁ〜、おだわらおだわら、思えば遠くに来たもんだぁなんて浸っているうちに、ここが新しいマイホームタウンなんだという実感がじわじわと・・。つくづく終点の駅でよかった。
 
●レース全走行:81.4km
●走行時間:2時間10分3秒
●平均時速:37.5km/h
●最高速度:52.00km/h
(写真は左から、アンカーの宮川氏、同じくアンカーの遠藤氏。撮影:中川キャプテン)

*1:関東一円で90店舗を展開するセオサイクルのレーシングチーム。公式ウェブはこちら

*2:NKロケッツのオフィシャルサイトはこちら