男脳度と女脳度

男が分泌するテストステロンは年齢とともに減少し、それにともなって性欲も弱くなっていく。女の性欲はなだらかな上昇曲線を描き、三六〜三八歳ごろにピークを迎える。中年女性と「若いツバメ」のカップルも、このグラフから説明がつく。性欲の強さでくらべると、一九歳の若い男と、三〇代後半から四〇代はじめの女がちょうど釣りあうのだ。グラフを見れば、四〇代の男の性欲と、二〇代はじめの女の性欲もちょうど同じくらいということがわかる。おじさんと若い女の組み合わせである。

 ヒトが発生するときは性染色体の違いをのぞいて機能的には全員が女。胎児の段階でテストステロンという男性ホルモンの浴び方で、男らしい男、女らしい女から、男らしい女、女っぽい男までが決定づけられる。だから歪みが生じる。この歪みの境界上に男と女が漂い、相違が魅力ともなれば相互不理解の種にもなる。
 本書は男と女の違い、おもに男女関係に関する精神構造の違いをテストステロンの作用で解き明かす。その科学的議論自体はもはや珍しいものでないが、男と女の二人の著者(しかも夫婦)が双方の立場をふまえながら書いた本なので、科学的(この本にいわせれば男性権威的)に言われれば「ふーんそうか」で終わりそうな話も、「げっマジかよ!」と安心してショックを受けることができる。コント的事例と箴言が豊富で女性にも読みやすそうだ。
 テストステロンの作用は男女ともに生涯を通じて関係してくる。テストステロンだけでなく女性ホルモン、興奮ホルモンなどさまざまなホルモンのカクテルの化学反応の結果として、男と女の精神作用の違いが生まれてくる。
「なんであのとき彼女は怒ったんだろう?」という男の長年の疑問は、本書を読めば何度も「うわぁあああ」と頭を抱える悔悟と変わり、「彼はどうしていつもああなんだろう?」という毎度くり返される女の不信は、「しゃーないわねぇ」と哀れみと親しみに変わるであろう。
 結婚して時を経た夫婦、付き合いの長いカップルは、こっそり読むといいかも。

話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く

話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く