湯河原・熱海重点攻略

 インプレッサSTiに積載したチャリ2機を伊東に投下すべく出立、のはずだったが、寝坊のため攻撃目標を湯河原に変更。
 湯河原は「小京都」に認定された町で、芥川龍之介をはじめ、山本有三国木田独歩ら文学者を魅了し惹きつけた。最近の人では西村京太郎が住んでいるそうだ。
 さっそくチャリ投下地点を探して町の中を徘徊してみるが、どうも心が踊らない。
「どう?」
「うーん、なんかちょっとね」
 狭い山道を使い、熱海に降りた。インプレッサ1.5ならば1速でういんういん引っぱらないと登れないような急坂も3速でゆるゆると進めるお手軽STi。細君の運転で僕はナビ。細い道ではあるとはいえ、どうして女は「道なり」に進むことができないんだろうか。道は左に折れていたのにまっすぐ直進して細い枝道に入ってしまった。バックもならない。すれ違いで冷や汗を流しながら熱海駅のガード下前まで来た。が、高さ2.1m制限。白兵戦用チャリ2機をルーフに搭載したままでは通れない。狭いガード前で緊急停車し、予定外のチャリ投下。
 ここから僕と娘はチャリで、細君はSTiで熱海港へと向かったが、一方通行が多い複雑な地理とはいえ、何回か細君のクルマがあっちに行ったりこっちに行ったりするのを見た。
 港から見た熱海の町は南向き斜面にホテルや高層マンションが林立し、浜辺は人工ビーチとスカイデッキ。モナコみたいと細君が目を輝かせた。小田原は高い建物は似合わないが、熱海は違う。高い建物、白い建物が海と山とよく調和している。景観とは不思議なものだ。
 僕はマラソン、ふたりはチャリで熱海駅への急坂を登坂。小田原と違ってバイパスルートがないために地元以外のクルマで混雑しているし、せかせかした感じがして落ち着かない。熱海もまた新幹線の停車駅だが、斜面の途中にあるので、上側にしろ下側にしろ坂は避けて通れない。情緒ある小路の坂もあるが、裏の裏までクルマがしみ込んでくるので落ち着かない。熱海の地下を抜けるバイパスルートをつくれば、ほどよい落ち着きと鄙(ひな)びがでてきそうであるが、それは反面ゴーストタウン化を進めるだけの結果しか生まないかもしれないし、単純にはいえない。
 昼飯は港の食堂に入った。巨人の松井や桑田といった有名人が来店した写真など、いい感じのヤレ感だったが、出てきた魚料理はじつにひどかった。
 ハズレの店だったといいたいのではない。同じ面構えの店が五、六店舗並んでいる。どの店も横並びだろう。でなければ熱海の歴史の中で、あまりにひどい店は淘汰されるはずだ。どこもどっこいどっこいということだ。これでは、たまたま入った流れ者的観光客をリピーターに変える力がない。けっきょくメディアの波に乗った店だけが実体以上の客を集め、メディアからこぼれた店が弱体化する。この悪循環を解消するためには、町全体が一丸となって、どの店に入ってもハズレのない町、商店会をつくっていくべきだろう。少なくとも小田原では目隠して店に入っても、よほど運が悪くないかぎり、大きくハズすことはない。これが町の総合力ではないか。
 熱海は再起を賭けている町だ。ビーチの整備をはじめとして行政の努力は一定の効果をあげていると思う。しかし地元の商店会、そして店のひとつひとつはどうか? もちろん努力はしているんだと思う。が、ひとつひとつの店や企業が、熱海を訪れるひとりひとりの人に対して接する姿勢は、投げやり、というか負け癖というか、どこかすさんだ感じを受けてならない。いい町だからこそ、そこに住む人々には自信と誇りをたいせつにしてほしいと切に思う。再開発に頼ることもひとつの手だ。だが外資にやりたい放題やらせる投げやり感は、町の底力を弱らせる。がんばってほしい。
 帰途は県道11で熱海峠、十国峠、大観山、ターンパイクと、細君の運転でワインディングを堪能しつつ正午過ぎに小田原本陣に帰還。
 移住先候補から湯河原と熱海をはずした。
 次こそ伊東にチャリ部隊を投下したい。
●本日の走行:マラソン(妻子はチャリ)10km、クルマ70km