微温ハードボイルド女の三景

 大道珠貴『しょっぱいドライブ』。芥川賞受賞の表題作ほか2篇を収録。年代こそ違うものの、どれも九州産をにおわせる超低体温の女が主人公。感情の起伏なし、発情なし、行動なし、決断なしで、流れに流されながら観察眼だけは超クール。クライマックスもなく、成長もなく、教訓もなく、ほろりもない。何もないまま低空飛行の感覚だけが鋭く動く。こわいぐらいクール。ある意味、これもハードボイルドかも。こんな感覚で生きている女を生む土壌の九州(福岡)はハードだ。