はじめての美容院

 入院生活にそなえる。なんせ生まれてはじめての入院だ。
 そういえば煙草は1週間以上、1本も吸っていない。記念事業の一環として、生まれてはじめての美容院にチャレンジした。これまで美容院というのはひどく抵抗があったし、髪を染めるなんて言語道断という心根だったのだが、今回、手術で顔を切り刻んだり頭蓋骨にネジ穴を切ったりするんだし、もう精肉工場にでもどこにでも連れていってくれという気持ちであった。
「みじかくね」
「中田みたいな感じでどうですか?」と美容師。
「うん、それでいこう」
「色は明るくします?」
「似合うようにやって」
 困った美容師に妻が、
ベッカムとブラピの中間ぐらい」
 例えが例えで恥ずかしかったが、単に髪形の話なので照れることはない。しかしこれでしっかり美容師に伝わったらしきところがすごい。
 完成したとき、他人みたいで卒倒しそうになった。中田ってそういえばこんな恥毛みたいな髪形してたなあと痛切にビジュアルが蘇ってきた。ベッカムみたいなキューピー登頂。ブラピはどこにいるのだろう?