嵐の海! で、泳いだ

 日曜早朝。
 お、雨が降っていない。
 チャリで箱根へ。前日は国道一号最高標高地点の看板前で記念撮影しようとしたら、携帯のカメラが電池切れ。本日、フル充電でのぞんだ箱根だったが、箱根湯元を過ぎたあたりで暴風雨に遭遇。Uターンし、強風に乗って時速60キロで逃げる。けっきょく湯元で撮影した標高94メートルの記念写真となった。トライアスロン専用チャリの納車記念。
 帰路6キロは口から泡とヨダレを流しながら、時速45〜55キロでクルマを追い越しながら帰った。今回のチャリはただのチャリではない。逆立ちしそうなウルトラ前傾ポジションで、風を切り裂く。その名も、猿兵衛呂(さるべろ)。
「すごい雨が来るぞー」
 と家族に言ったが、薄日がさしているぐらいで、信じてもらえない。
 娘は、海に行く、と言ってきかない。
 まあ海なら雨でもいいかと準備をしていると、暴風雨になった。
 午前10時、雨があがったので、海に行く。
 天気は不穏で、間欠的に激しい雨が降った。波も高く、ときおり巻き波が白い飛沫をあげている。もちろん、誰もいない。
 砂浜を駆けた。大波にむかってダイブ。引き波に吸い込まれ、入水成功。
 水が濁っている。恐怖心。
 短いピッチで波濤が寄せてくる。恐怖心。
 ブイとロープで区切られている一番奥まで泳ぐと、深い場所のはずが、なぜかちらっと水底に岩がせりあがっているのが見えた。背筋がぞっとした。
 海は怖い。10周約2000メートル泳ぐつもりが、疲れというより恐怖心で3周で挫折。スウィムアップ。
 波打ち際で娘と立っていたら、大波で娘をさらわれそうになった。必死でキャッチ。
 海は怖い。
 風雨もきつくなってきた。監視員の黄色いサーフボードが風にあおられて、宙を舞う。追う監視員。無人の砂浜。
 雷が来たら海上は危険だし、浜辺を退散。
「おとーさん、今日は流されてたよ」
 と、ワイフが言っていた。
「泳いでたら、浜を全力で走っている女が見えた」
 ワイフは浜辺を3往復、全力疾走のインターバルをやっていたらしい。
 雨は降ったり止んだりだったが、家にもどってすぐ、僕はランニング、ワイフと娘はチャリで酒匂川サイクリング公園に出撃。途中、カレー屋で飯を食ったり、電気屋でテレビを見たりして、驟雨をやりすごしながら前進。
 サイクリング公園はやはり無人。1周回1.6キロ。ワイフもここからはランニング。
 今日は買ったばかりのマラソン雑誌の記事にあった「LSD」なるものをやってみた。
 LSD。ロング・スロー・ディスタンス。
 ゆっくりどこまでも走ろうと試みることで、10キロ走ると自分の体はここが痛くなる、20キロ走るとここが壊れる、とか、そういった肉体との対話を通じて、距離に対する経験を積み、同時にエアロビックな肉体の基礎をつくるというトレーニング法らしい。
 5キロを過ぎた。ふつうなら右膝が痛くなってくるころだが、キロ7分弱のゆっくりペースなら膝も痛くならないことが判明。これはいける。
 10キロを過ぎた。膝はだいじょうぶ。くるぶしにチョイ危険信号。
 14キロ過ぎ。まったく想定外の左の足小指がクツズレ。
 この間、周回路を娘はチャリで10周。
 サイクリング公園を後にし、クツズレの痛みが限界で、いったん酒匂川河口の浜辺で休憩。本番ではテーピングを持っていった方がいいと勉強になった。
 ここの浜辺はビーチとしては、うちの近所の御幸が浜海水浴場よりはるかに格上なのに、海水浴場ではない。以前、サーファー暦の長い人に聞いたことがあったが、酒匂川河口のビーチは波が強くて、台風のときなどは有名なサーファーが乗りに来るそうだ。今日は荒れ模様の天気で、確かにすごい巻き波ができていた。
 休憩をはさんでからは、体の調子も落ちず、合計2時間余で20キロを走った。(休憩時間をのぞく)
 クツズレ対策さえすれば、もうちょっといけそうな感じだったが、家まで残り1キロほどの地点で、チャリに乗っている娘がランニングしたいと言いだした。ワイフもランニングしたいと言って、ジャンケンをしている。おかしな家族だ。
 交替で娘のチャリとワイフのチャリを僕が乗る。ふたりとも、いいペースでランニングしている。
「なんかここにきて、調子がでてきた」
 と、目が燃えているワイフ。
 夜にまた走ろうという話になったが、飲み屋で飲んで帰ったあとは、布団もひかず、ばったり眠り込んでしまった。娘なんか、フローリングの上にじかに寝ている。やっぱり変な一家だ。