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しじみの すいちゅうめがね

詩的断章

作・市原 円
2004年8月 小学1年の夏休みの宿題として絵本として提出
2006年11月 読売ファミリー童話賞優秀賞
オリジナル版(PDFファイル 927KB)

 しじみは おふろが だいきっらい。だって シャンプーが あるんだもん。
 しじみが いつも シャンプーがきらいそうなので おかあさんは ふるい すいちゅうめがねを もってきて、
「これ つけてごらん」
 すると ふしぎなことに するするっと シャンプーが できました。
 しじみは なんだか うれしくなってしまいました。
 だいっきらいな くすりを のむときに しじみは すいちゅうめがねを してみました。するするっと のめました。
 だいっきらいな ねぎも ぱくぱくと おいしく たべられます。
 しじみは いつも すいちゅうめがねを ぽけっとに いれて あるくようになりました。こまったことが あっても すいちゅうめがねを かけたら ほーら、もう だいじょうぶ。
「へんなこねえ」
 おかあさんも こまった かおで わらっていました。
 あるひ、しじみがテーブルをみると、なんと すいちゅうめがねを テーブルにおいていたのに、
「ないないないない!」
 すいちゅうめがねが なくなって しまったので、しじみは、シャンプーも ネギも くすりも、ぜんぶ できなくなってしまいました。 がっかりしたしじみをみて、おとうさんが、あたらしい はながらの すいちゅうめがねを、かってきてくれました。
 しじみはよろこんで かけてみましたが、どういうわけか、シャンプーもネギもくすりも、やっぱりだめでした。
 しじみは しくしく なきだしてしまいました。 ちらっとそとをみると、おおきなねこが、なんと、しじみのすいちゅうめがねをしているではありませんか。
「それ、わたしのよ。かえして」
「やなこった。こいつは おいらのさ」
 しじみは すこしかんがえると、あたらしい はながらの すいちゅうめがねを かけて、
「やっぱり あたらしい すいちゅうめがねは いいなー」
 おおねこは、しじみを じっと みました。
「はなの えも ついてるし、あなたのには ないの?」
 おおねこは、うーん、と うなりました。はながらの すいちゅうめがねが ほしくて しっぽを もじもじしています。
「どうしようかなー。あなたのと かえてあげようかなー。でも やめとこうかなー。どうしようかなー」
 おおねこは ぶるぶるっと みじかい しっぽを うごかすと、
「かえてー」
 と、さけびました。
 こうして しじみは もとの すいちゅうめがねを おおねこと こうかんすることができました。
 しじみは、すいちゅうめがねのおかげで またもとどおりに きらいだったことが なんでも できるようになりました。 きょうは、しじみは がっこうまで あるいていきました。そこで なんと がっこうの すぐそばにあった たかいきの えだに すから おちた あかちゃんとりが ひっかかっていて がっこうの みんなが おおさわぎ。 そこで とうじょう。しじみの すいちゅうめがね。
 ぐんぐんぐんぐん のぼる しじみ。すいちゅうめがねを かけて ぐんぐんぐんぐんぐん のぼる。
 とうとう しじみは ことりを おろすことができました。
 がっこうの みんなは すごいねー と よろこんでいました。しじみは うれしくて また つぎの いくところへ いきました。 さて つぎのところは もりのなか。
 もりのなかの おおきなきを ぐんぐん、ぐんぐん のぼって うえまで いくと なんと きれいな けしきが みえます。
 それだけじゃなくて むこうのほうに きれいな みずうみがみえます。さっそく しじみは みずうみまで あるいて いってみることにしました。 すると みずうみでは こねこが おぼれていました。そこで しじみは すいちゅうめがねを かけて みずうみの なかで およぎはじめました。
 どんどん およいでいくと なんと すいちゅうめがねが はずれてしまいました。しじみは いっしょうけんめいで きづいていません。まわりで みていた みんなは はらはらしました。だって しじみが およげないことを みんな しっていたから。 ついに すいちゅうめがねが とれたまま、しじみは こねこを たすけて、きしに たどりつきました。
 みんな やったー と おおよろこび。
「でもさ、しじみの すいちゅうめがね はずれてたよ」
 そういわれた しじみは びっくり。
 なんだ わたし すいちゅうめがねが なくても およげたんだ。 いえにかえった しじみは すいちゅうめがねを はこに しまいました。
「やっぱ すいちゅうめがね ないほうが いいや」
(おわり)

無責任なまでにドライな結末がよい。さらにオリジナル版のラストの絵は、圧倒的な空白がうみだす諦念に眩暈さえ感じる。子どもとは、なんとハードな思考の持ち主であろうか。(市原千尋 評)