父娘と、娘の友だちの父とのフライ修行

 東海道本線が運行停止になるほどの強風の休日、さゆりちゃんのお父さん(つかさん)と市原一家で、静岡県裾野市のすそのフィッシングパークに行った。ここは周囲を山に囲まれているので、風の影響をかなり抑えられる。
 この日、はじめて自分で巻いたフライを使った。娘にもらった緑の刺繍糸をセメダインでかためたフライ(こういうのをフライというのか分からないが)を投入すると、いきなりヒット。三投目ぐらいは連続ヒットだったが、その後、ぴたりとアタリが止まった。
 美しい釣り場だったが、水が澄みすぎていて、魚から見切られるのが早い。おまけに風であおられて遠投できない。一日苦戦を強いられたが、いい勉強になった。
 家に帰ってからは、つかさんと机をならべてフライを巻いた。
 つかさん曰く、フライは釣りが三分の一、タイイングが三分の一、キャスティングが三分の一。
 釣れればいいというものではなく、あえて自分に厳しいハードルを設定するのがフライマンの世界だそうだ。キャスティングだけを競う公式なスポーツ競技もあったりする。針をつけずに芝生の競技場で飛距離を競うそうだ。日本でも休日など、公園でキャスティングの早朝練習会なんてのもある。
 娘の三学期がはじまってからも、夕方の2時間だけ、連日いっしょにキャスティング練習に行っている。
 夜は僕はフライを巻き、娘はフォーセップの使い方の練習。(フォーセップはフライ用の針はずしのこと)
 夕食には2尾だけ持ち帰ったブラウントラウトを料理。
 小さい方は塩焼きにした。大きい方はワイフが帰ってくる直前まで生きていたが、三枚におろして、オリーブオイルで香草蒸しにした。
 まないたの上にのせ、死ぬ瞬間、美しい褐色の魚体がみるみる黒ずんでいく。それを見た娘がかなしそうに、もう持って帰るのはよそう、と言った。
 ブラウントラウトを食べるのははじめてだが、イワナに似た味だった。香草蒸しはワイフも気に入ったようだ。僕はほとんど食べなかった。