気づかないふり・・仮面家族のフルマラソン

 深夜に京都にむけてファミリーカーで出発の予定。
 京都では、土曜日はマス釣り、日曜は初フルマラソン大会。
 状況は厳しい。
 悪化していた風邪は午前をピークに薬が効いてきたのか、頭のぼんやりは晴れはじめた。薬を飲むと風邪をみとめることになるので、気づかないふりに徹しようと思っていたが負けた。風邪をみとめると、かぜん、弱気になる。
 ここ1ヶ月ほど悩まされている両膝の痛みも、安静がきいて小康を保ってはいる。これもへたにさわったり動かしたりすると弱気になるので、気づかないふりに徹する。
 そしてもう絶対に気づかないふり作戦が通用しなくなってしまったのが、とつぜんの腰痛。
 寝返りも打てず、靴下もはけない。ここしばらく腰痛はなく、原因に思いあたるふしがない。風邪が遠因かと思ったが、どうやらフライキャスティングの練習のしすぎか。強風の中、腰の回転を意識してキャスティングをくり返していた。そういえば手首も痛い。
 フルマラソン以前の問題として、そもそも大会会場の京都までたどり着けるのか?
 同じくフル初出場予定のワイフも、この1週間というもの激務で始発行き終電帰りをくり返している。激務のピークは休み明けとのことだ。のどもとまで、土日は仕事をしたいという言葉が出そうなのが分かる。でも気づかないふり。彼女も膝痛に悩まされ、まともにロングの走り込みができていない。これも気づかないふり。
 娘は3キロの部で出場予定だが、親たちが走っているあいだに、知らない土地でひとりでちゃんとできるだろうか? 留守番もできない子である。
「わたしもでるなんて聞いてないよ〜」
 と抗議する娘だが、じつは申し込んだことを僕も忘れていて、参加通知書に名前があるのを見てびっくりした。気づかないふり。
 今朝はこの冬いちばんの寒さ。東海道新幹線も雪で止まったそうだ。雪か。気づかないふり。
 投宿先もまだ決まっていない。気づかないふり。
 こうして市原家は、みながみなそれぞれに気づかないふりをかさねながら、京都へ。