国道1号・飲酒パワー全開の爆走(決死の密着映像つき)

 GW後半2日目は、にぎやかな囃子太鼓と笛の音で目覚めた。
 筑波サーキットから夜のあいだに移動して小田原に帰ってきていた。
 この日は、ワイフとふたりでランニング&チャリの駅伝スタイルで箱根アタック。国道1号線を芦ノ湖まで行くルートで、箱根駅伝の正式ルートでもある。
 わが家が小田原中継所の300m手前なので、芦ノ湖までたどり着ければ、駅伝コース花の5区制覇となる。
 しかし芦ノ湖までのほぼ中間地点の宮の下まで行ったが、あまりの渋滞のひどさに先に行くことを断念。道幅の狭い急坂なので、クルマが渋滞しているとランニングさえ難しい。渋滞のわずかなすきまを、韋駄天走りで引き返した。
 登坂430m、距離23km。
 小田原にもどると、走りながらいくつもの神輿に遭遇した。
 小田原では3日間にわたって松原神社の氏子である27基の神輿が町をねり歩く。松原例大祭である。
 せまい町に27基もの神輿が集結すると、200m歩くごとに神輿の集団に行きあたる。
 木遣歌(きやりうた)、威勢のいい掛け声とともに、店舗という店舗に片ッ端から神輿ごと突っ込む。「つっかけ」と呼ばれる習わしだ。店側はいくばくかの金を包んで渡す。これを、27基の神輿ぜんぶがやってきて、くり返される。
 小田原ではセブンイレブンでさえ、この風習を受け入れていた。たまたま外から来て店の中にいた人は、びっくりしていた。
 交通規制などない。町の隅々まで公道という公道が祭りの会場である。
 神輿が店舗に突っ込んでいるあいだは、クルマはじっと待っている。文句を言う者などいない。警察も黙認のようだ。
 国道1号でさえ、しばしば神輿の露払いの者たちによって封鎖される。クルマはじっと待っている。
 この27基の神輿は3日間かけて町のすべての店をまわる。朝から晩まで。
 2日目は27基の神輿すべてが御幸浜(みゆきがはま・うちから200mの浜辺)に一列に並び、海にむかって「つっかけ」を行なう。波を割り、飛沫をあげて突進する神輿の列は壮観な眺めである。
 3日目の夜はすべての神輿が順番に、本殿である松原神社(うちから100m)の鳥居にむかって全速力で「つっかけ」を行なう。担ぎ手たちの疲労と酒はピークに達し、あたりの空気は緊迫する。
 血気にはやる担ぎ手たちを、長老らが命がけで押しとどめる。
 突っ込む。押しとどめて引き戻す。これを2回くり返す。
 相撲の仕切りのように緊迫感が高まってくる。3度目、唐突に突進がはじまった。担ぎ手たちの機関車のような呼吸とともに、公道飲酒パワー全開の爆走。
 このあと松原神社の鳥居前で神輿はぐるぐると回転し、次にわさわさと大きく揺らされる。
 そして国道1号にむけて再び突進する。
 車道に出ようとする神輿を押しとどめる警官。しかし担ぎ手たちは警官の言うことは聞かない。
「クルマは通るのに、神様がだめって法があるか!」と、逆に説教している。
 しぶしぶ警官はクルマの流れを停めて言う。「悪いけど、信号だけは守ってくれよ!」
 ここは国道1号線である。