飯能ツーデーマーチ 60km

 前日のよれよれ使い切り消耗作戦成功で、ツーデーマーチのスタートを切る前から足に深い疲労。アイヤーンマン五島にむけて、この足が終わった状態から、どれだけ進めるかが今回のテーマである。
 参加は7000名で多くが中高年。
 1日目は飯能の豊かな里山と茶畑を縫って進むトレイルウォーク。コースは未舗装路が多く、とてもよかったが、筋力の消耗も激しかった。
 無意識のうちに心拍ゾーンが上がる。110以内の心拍を維持するようにし、足も地面から離さない競歩のような動きで消耗を最低限に抑える。
 15km地点あたりで先頭グループに追いついたが、抜かそうとしたら「あんた、走りに来たの? 走りに来たんなら、やめた方がいいよ」と言われたので、おとなしく彼らの後ろについていった。
 茶畑をキロ5分30秒で突き進むウォーカー。すごい。試しに僕も歩こうとしてみたが、ムリ。まったく、ついていけない。走った方がはるかにラクである。しかしどうもマーチで走ることはマナー違反のような雰囲気だったので、競歩みたいなスタイルを練習。疲労しない方法を模索しながらの行軍である。

 25km地点で先頭者から前に行け、と手ぶりで指示されたので歩速を上げ、後続が見えなくなったところで走った。歩くと足が痛い。走った方が負担が小さい。すると、川沿いのオフロードで、新たにほんとうの単独先頭者がいた。学生のような感じの若者で、序盤からぱっぱか走って抜かれたのを覚えている。
 彼を追い越すと、後ろから軽快に走ってきて、
「あと何キロですか?」
「たぶん4キロぐらい。歩幅で計測してるから正確じゃないかもしれないけど」
「そんな機械あるんですか。すごい!」
「クツひもにセンサーつけるの」
 彼は、「最後なんで、やれるとこまで走ってみます」と言って、気持ちよく走りはじめた。
 誰かが走ってくれるとラッキー、こちらも気兼ねなく走れる。
 ゴール手前で電話がかかってきた。10キロコースに出たワイフから、
「1番に着いちゃったんだけど、まだゴールの受付してくれないみたいなの」
 僕もその後、3時間43分でゴール。29.7km。
 正午をまわってから、5キロの部に参加した娘とワイフの両親もゴール。
 夜は所沢の居酒屋「ざうお」でワイフの兄もいっしょに宴会。自分で釣った魚を調理してもらう居酒屋で、娘と兄がタイ、アジ、ヒラメを釣った。僕はシマアジがかかったが、数十秒のバトルの末に逃げられた。



 2日目は午前7時半に名栗スタートである。
 スタートまで時間があったので、名栗湖やその上流のマス釣り場を視察。
 名栗川に沿って下る山岳コースだが、この日は序盤からランナー数名が先頭を牽引してくれたおかげで、心置きなく走ることができた。
「トレールランやってるの?」と山岳スペシャリストという人に訊かれたので、「大会ははじめてですけど、ロードとちがって山道はこんなに楽しいんですね」
 彼は富士登山競争も完走したことがあるという。「ウォーキングイベントで走ったりすると、うるさく文句を言われるようなことも多いから、ずーんと前に行っちゃって人の見えないところで走るといいよ。順位があるわけじゃなし、だれに迷惑かけるわけでなし」と、おしえてくれた。
 10キロ地点からは先頭集団は3人だけになり、かなりのハイペース。このままついていけるか自信がなかったが、やれるだけやってみることにした。
 25キロ地点。クツ1足分の幅しかない獣道で峠越えの最中、それまで重かった足が、なぜだかとつぜん軽くなった。江戸時代の忍者になったような気分で、新緑の里山を快走。あとはゴールまで単独で思いきり飛ばして走った。
 終わってみれば3時間4分。30.9km。
 歩いているんだか走っているんだか分からない、微妙な一定ペースを維持すること・・この方法の利点を痛感した2日間の修練であった。

ラン 60km
釣果 タイ、アジ、ヒラメ(居酒屋「ざうお」にて)
漁場調査 名栗川、宮沢湖、名栗湖