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『クワイエットルームにようこそ』松尾スズキ

 これは、本格的だ。
 今まで「絶望だ」と思っていた出来事のすべてが、「100均」に並んでいるような安物の絶望に思える。今度こそホンモノ。この孤独のコクの濃さ。密度。いやだ。考えるな。ペラペラの現実の尻尾を、つかめ! つかんで離すな!
 ひゃっひゃひゃひゃひゃあ。
 わたしは一人ぼっちの冷たい部屋で、とうとう笑い出したもんだった。生きてまあす。わたし、生きてますからああって、泣きながら笑ったもんだった。(『クワイエットルームにようこそ松尾スズキ


 松尾スズキは劇団「大人計画」所属。あのクドカン宮藤官九郎)の師匠格にあたる人である。演劇畑の人の小説が熱い。言葉が走っている。
 小説はオーバードーズで緊急入院した、28歳の雑誌ライターで元読者モデルの女の、退院するまでの2週間を描いたものである。
 偶然にも、この小説を読みはじめたのは病院の中でだった。前夜、東京からひとり暮らしの母をクルマで迎えに行き、小田原の病院に入院させた。ふくらはぎの筋肉が切れる、いわゆる「肉離れ」で、退院まで2週間。
 海と真鶴半島の見える病室や、リハビリセンターで、院内描写など、いちいちうなずきながら読んだのだった。



クワイエットルームにようこそ (文春文庫)

クワイエットルームにようこそ (文春文庫)