フジヤマに敗れたり


 秋彼岸の三連休は富士河口湖で宴会合宿。


 1日目、午前6時前に河口湖着。父と弟一家との集合時間は午後1時、いくらなんでも早すぎだ。
 娘は自転車、僕はランニングで河口湖の周回コースをゆっくり走った。コースの大部分は人車が完全分離でのんびりできるし、コスモスをはじめとした花畑ロードや木道、トンネルを迂回する岬沿いの小径(こみち)など変化に富んで飽きさせない。周回プラスアルファで24km。
 釣り人も多く、フライフィッシングセットを持ってこなかったことが、おおいに悔やまれた。
 午後は弟とローボート対決。島のまわりを周回するコース。猛スピードのエンジンボートの波に翻弄されながら、1時間でやっと3.1km。意外にも、泳ぐより遅いのだと知った。自転車用のグローブを着用していたにもかかわらず、手はふたりとも血豆。
 夜は午前3時近くまで宴会。酒豪の父と弟のふたりは、強い酒をロックでペースダウンすることなく飲みつづけていたが、とてもついていけず、ワインとビールで防御飲み。



 2日目。午前7時、オルベア・オルカ(ロード用自転車)で単身、山荘出発。
 寝起きでふらつく。いや酒のせいか。
 富士山麓をぐるりと巡る100kmの国道周回コースと、五合目までを往復する3本の登山道コースを組み合わせた、いやがおうにも征服欲を煽るルート設定である。
 1本目の富士スバルライン起点まではたった7km。しかしスバルラインを往復しおえた時点で、距離計は65kmを示している。序の口でこれだ。予定をこのまま進めば、いったい合計何キロになるのか? 見通しが完全に甘かった。
 おまけに富士山五合目は真冬の寒さ。もちろん長袖・長スパッツは着ていたが、延々とつづく下り坂で芯から冷えきってしまい、コンビニで停車し、自転車を降りようとしたらカラダがまったく動かず、派手に転倒。3年間、一回も傷つけたことのないオルカのフレームに痛恨の一撃。足も血が出ている。
 片足をついて完全停止していたし、もう片方の足を降ろそうとしただけで、なぜこんなに派手に転べるのか。冷えきった肉体が柔軟性を失なった一本の棒になっていた証左であろう。高さ180センチの氷柱を倒したようなものだ。
 なさけなくて100%戦意喪失しているところに追い討ちの冷たい雨。心の翼が折れた。
 まったく躊躇することなく、「富士五湖をめぐる傷心の旅」に企画変更。西湖、精進湖、本栖湖のレイクサイドロードは傷ついた心は癒してくれたが、オルカのフレームは癒してくれなかった。
 合計距離132km、合計登坂高度2020m。
 来期再チャレンジにむけての反省点。
 富士山周辺は、とにかく観光バスをはじめとする交通量が多く、単独の自転車には精神的にも肉体的にも苛酷きわまる。最小催行人数は3名に引き上げることが必要だろう。
 また、3本の五合目アタックコースにばかり注意がいきがちだが、じつはそれを結ぶ周回ルート自体もアップダウンが馬鹿にならない。1本目のスバルラインを終えた時点で、はじめてスタートラインに立ったと思うべきだ。1日で3000m以上の登坂経験を何度か積んでおくことは必須といえそうだ。
 それと防寒対策。想像以上に寒く、下りは特につらい。さらに天候の変化が信じられぬほど激しい。身軽で行きたいところだが、しっかり大きめの荷物を背負って登ることになりそうなので、腰痛も注意だ。


 三日目。トレイルラン5km。犬と3km走り、ごみ出しで2km歩いた。山荘が富士山の傾斜にある高原に位置しているので、周囲は林道の宝庫なのである。走っているとき、子犬ほどもある大きなリス(?)が道を横切っていくのを見た。


 シーズンオフは石垣山(うちから5分で行ける標高220mの小さな裏山。真冬でも海風であたたかい。平均斜度11%で、富士あざみラインと同じ)を連続10往復2000m、来期シーズン前半は15往復3000m達成を目標にして基礎力をつけよう。現時点で最高は5往復である。
 来期は富士山登頂も重要なめあてである。あざみラインでチャリヒルクライム、そのまま徒歩で砂走り富士登頂という企画もありえる。もっと力がついたら、海抜ゼロの小田原から箱根越えを経て、富士山頂3776mを足下におさめる「フジヤマ100%ごちそうさまコース」もやりたい。
 ビールが美味そう。