「はだしのゲン」中沢啓治

 娘が「はだしのゲン」を読んでいた。
 小学校高学年のときに、高知市立図書館に入り浸ってゲンを読んだときのことを思いだしながら、娘もそんな年になったかと感慨深く手に取った。
 同じ本だが、ゲンの父親の立場から読んでいる自分があった。父親が戦争反対の頑固者のために、家族は近所から非国民扱いされて、さんざん苛められる。非国民扱いから脱するために長男が出征を決めたときも、断固許さず、見送りもしない頑固オヤジである。
 そのオヤジが線路脇にたったひとり立って、息子の乗った汽車が通りかかったときに万歳三唱をする毅然とした姿に、うえーんと声をあげて泣いてしまった。この年になって声をあげて泣くのは恥ずかしい。


〔愛蔵版〕はだしのゲン 全10巻

〔愛蔵版〕はだしのゲン 全10巻