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自殺の能力

 絶望は僕に当然の帰結として、自殺の思想を抱かせた。僕はプリニウスの、次のような言葉にいたく惹かれた。


「・・神といえども、決してすべてを成し得るわけではない。何故なら神は、たとい彼がみずからそれを欲したとしても、自殺することだけはかなわないのだ。ところが、神は人間に対しては、かくも多くの苦難に充ちた人生における最上の賜物として、自殺の能力を賦与してくれた。・・」
(『アサッテの人』諏訪哲史)


 個体数が増えすぎると集団で川に飛び込むレミングの大量自殺、テロメアと呼ばれる細胞の自殺現象・・。キリスト教では禁じられているにもかかわらず、自然を見わたすと、自殺は神が仕組んだ因果律ではないかと思うことがある。
 『アサッテの人』は群像新人賞および本年の芥川賞受賞作。