一月末で娘が十歳になった。ティーンエイジャーである。
うちはゲームもテレビもずっと禁止であったが、これは娘のためというより、私のためであった。ティーンエイジャーのころ、学校をサボってゲーム漬けの生活をおくっていたのは私である。
娘の学友たちはニンテンドーＤＳなるものを持ち歩いているらしく、娘からも何度か所望されたことが、ノーを通してきた。
「おまえはこれからティーンエイジャーなのだから、ルールさえ守れば自分でやりたいことを決めてよろしい。手はじめに、ニンテンドーでも買いに行くか」
おもちゃ屋に行った。ゲーム機売り場の前で何度も逡巡していた娘は、けっきょく「ゲームはいい」と言って売り場を離れた。ゲームよりも欲しかったものがあるという。「くみくみスロープ」という、くもん出版発売の教育玩具だった。
箱を取ってみると、対象年齢３歳〜６歳とある。さ、三歳・・と口をつきそうになって、踏みとどまった。彼女には三歳の玩具を選ぶ自由だってある。
もうひとつ欲しいものがあると言う。トラの着ぐるみだった。き、きぐるみ・・と言いそうになって踏みとどまった。彼女にはトラの着ぐるみを着る自由だってある。
休日の朝、がらがらというやかましい音で目覚めると、窓辺でティーンエイジャーのトラが玉ころがしをしていた。
