7泊8日の長野でのテント生活。
二年に一度、屋根がある飯がある水が出るのありがたさを実感するためのツアーである。
そもそもキャンプとかアウトドアーとか面倒くさいことが家族そろって苦手なので、好き好んでやるわけではない。しかも今回は初の軽貨物車での移動。道具も厳選せざるを得ない。
娘と二人で月曜深夜、熱帯夜の小田原を出発。箱根を越え、一路北上。
富士山に近づいたあたりから豪雨に見舞われるが、長野白馬ではすがすがしい朝を迎えた。
白馬で高原トレッキングをしたかったが、入山するのにリフトやらなんやらで往復3000円以上の交通費がかかる。標高の高い白馬は天候もシビアなので、完全な快晴の午前中を狙わなければ、投資に見あうトレッキングはできない。
今回はあきらめて、ひとけのない広大な無料駐車場にタープを張って仮眠。
昼前に戸隠高原に約60km移動。
戸隠高原キャンプ場は広大な敷地内にトレイルコース、牧場、川まである。ただ一泊4000円と高い。
食事はすべて家から持ってきたおにぎりととうもろこしで済ます。
温泉に入ったが、娘が温泉はいやだと言いだしたので、翌日からはすべてキャンプ場のシャワーということになる。
近辺のトレイルコースを娘と攻略する。登山も考えたが、1000mを越える高地は、とにかく天候が不安定。
夜は寒くて寝袋でも足りないほど。寝相の悪い娘の被害にたびたび遭う。
鏡池までのトレイル5kmとロード11km。夕食はモロヘイヤのおひたしとハンゴウご飯。
安い野菜がモロヘイヤしかなくて、そんなもの生まれて初めて食ったが、ものすごく美味い。娘も家にいたら絶対食わなそうだが、ここではこれしかないせいか、美味い美味いと言って食っていた。
飯は毎日五合炊く。おこげが好きでないので、一晩ハンゴウに水を張って、翌朝、粥して食ったら、洗う手間も省けて一石二鳥だった。
モロヘイヤとご飯の毎日。卵かけご飯もよかった。
テント生活は消耗戦だ。だんだんと撤収する元気がなくなり、惰性で連泊したくなる。しかし一泊4000円なので財布が痛い。
すぐ隣にやって来て、われわれの三倍はあろうかというテントやタープを設営しはじめたのが、深夜まで騒ぎまくっている東京のガキ連れ家族団。彼らが連泊するという話が聞こえたので、娘と撤収を決め、静謐を求めて野尻湖へと移動。
新たなキャンプ場は目の前に野尻湖の浜と桟橋があり、念願のスイムとフライフィッシング三昧。
早朝と夕方は大学の長距離選手たちにまみれて、湖周回の15kmロードワーク。娘は自転車。アップダウンが多く、刺激に富んだコースだ。
野尻湖での三泊目の日、ようやく東京での仕事を終えたワイフが新幹線で長野入り。
「なんか、痩せたね〜」と開口一番に言うワイフ。
粗末な自炊、モロヘイヤ、シャワー、テント生活とスイム・ラン三昧の生活で、落ち込んだ眼窩からぎらぎらと目だけが光る、これぞ野性の父娘だ。
集合場所の黒姫高原駅で、370円の立ち食いそばを食った。これが今回の旅の初めての「外食」である。無料サービスで、きゅうりの漬物、高原トマト、茹とうもろこしが皿にもってある。何度もおかわりしていたら、さすがにおばちゃんに、ちらりと見られた。
ワイフもいっしょに野尻湖1周ラン。彼女は温泉を期待していたようだが、またもや粗末なシャワー。
シャワー室では、服や下着の洗濯もする。パンツは乾くのが遅いので、ノーパンのまま過ごすことが多くなってきた。
それでも生乾きで何度も着たり洗ったりをくり返すので、いい加減、おかしな匂いがする。野性の匂い。