日本一有名な宵桜

 円山公園(京都)に、東山魁夷も描いたしだれ桜があるという。この桜が朝日新聞の読者アンケートで日本一の桜に選ばれて、知った。
 高速道路が千円上限となったこともあり、ほんとうに京都まで千円で行けるのものなのか興味もあって、仕事が終わって帰ってきた妻と娘を軽自動車に乗せて小田原を出発。かろうじて夜明け前に京都に着いた。


 園内はブルーシートに埋め尽くされ、酔った学生の歌声が響き、日本酒のような吐息のようなすえた匂いが漂っている。ビールの空き缶、食べかすといったごみが散乱し、そんななかに立っているしょぼくれた桜のてっぺんにはカラスまで止まっている。
 枝ぶりがすごいわけでもなく、三大桜のように樹齢がすごいわけでもない。
 立地にしても、山の中の一本桜ならまだしも、公園の中。
 けれど、初めてみるのに懐かしい気がした。
 喧騒、ごみ、匂い・・そんなものがごちゃまぜになった宵桜をしばし見て、夜の公園を去り、そのまま小田原に戻った。
 高速道路料金は往復で2,100円だった。





東山魁夷「花明り」