近所で蛍

 蛍の季節である。
 新聞に蛍の記事が出ていた。
 その場所が家からクルマで30分ぐらいのところだったから、行ってみようかと思って調べてみると、それとは別に、うちの近くにもいるらしいことが分かった。
 場所をくわしく調べていると、ちょっと待った、これってデイリーランニングコースの途上じゃないか、ていうかそこ、ついさっき走ってきたばかりだし。


 蛍が出るらしい場所は、家から2km。
 終夜光っているヘイケボタルとちがって、ゲンジボタルは日没後の2時間ぐらいしか活動しないらしいので、日没後にワイフと娘と連れだって行った。
 正直、彼女らも半信半疑。彼女らも週に一度は必ず通っているところだし、そもそもホタルが光っているところがこんなとこにあるわけがない、ホタルというのは自分たちの遠く及ばない、もっと遠くの秘境みたいなところにいるものだと思いこんでいたようだ。いや、僕だって半信半疑だ。
 行ってみると、案の定、鑑賞者らしき人は誰もいない。
 やはり間違いか、と思って水ぎわの林に目をやると、ざわわわわー、木がクリスマスツリーみたいになっている!!


 けっきょく三人で小一時間、揺曳する光を見ていた。
「小田原って、すごいとこだねえ」
 ため息しか出ないひとときだった。