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タレコミ屋がひそむパープルライン 

筑波山パープルラインは現在、二輪車通行禁止である。
 関東を代表する名峠のひとつといっていいこの道が二輪車通行禁止になったのが80年代後半。以後、絶滅したかに思えたパープラーは細々とひとけのない早朝を中心に生き伸びているという。
 その実態を観察しに、僕たち市原一家は日産の誇る名車サニーに乗って、くり出したのだった。
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●静謐な早朝の空気を切り裂いて、甲高いエギゾーストノートとともにグリーンのバイクが現れた。平野の中の独立峰、筑波山。その霊峰の尾根を伝ってのびるのがパープルラインである。ただし法的には二輪車通行禁止。
 

森閑とした早朝の霊峰つくばね。その尾根をたどるように伸びるパープルライン。下界の見晴らしは最高だ。
 と、そのとき、ここ地元で名物のライムグリーン男が甲高いエギゾーストノートともに現れた。地元のGSXーR乗りに訊いてみると、このへんでは、ミドリさんと呼ばれているらしい。
「僕がここに通うようになったのは3~4年前からなんですけど、そのときから一番目立ってましたね。音と動きが派手なんですよ。みんな狙ってたみたいなんですけど、ミドリさん、ぜったいヘルメットとらないんですよね。で、誰かが追っかけようとすると、すぐいなくなっちゃう。煙草を吸うときもヘルメットをかぶってたのを見たってやつもいますよ」
 この日、緑色のバイクは他にもう1機いた。これは僕のすぐ近所に住んでいるN君。以前はRVF400に乗っていたが、最近、ZXR750を買ったようだ。そしてさっそく家の前でマフラー交換していたところを、秘密調査員M嬢に発見され、そのまま翌朝のパープルラインに連れて行かれたのだった。
 赤いバイクは最新型のCBR600RRのS君。インタビューしてみると、その日ははじめてのパープルラインだということだった。
 少しずつ集まってきた人たちにインタビューをつづけているうちに、すぐ近くにミドリさんが停車した。噂通り、ヘルメットを脱がずに煙草を吸っていた。すごいのはスモークシールドも降ろしたままだった。煙はこもらないのだろうか。
 僕が声をかけようかと考えているうちに、向こうからパトカーがやって来た。パトカーは目の前で斜めに急停車すると、4つのドアが同時にばっと開き、警官が飛び出した。
西部警察みたいだった」
 と、その場にいたかよぼんが言っていたように、天空に突き上げるエンジン音に振り返ると、警官のうち2人がミドリさんのバイクに飛びかかっているところだった。が、ミドリさんはその手をくぐり抜け、甲高い音を残してコーナーの向こうに消えていった。
 一瞬のできごとだった。
 けっきょく僕たちはたっぷりと絞られた。サニーで来ていたのにである。N君はなぜだか免許を提示しようとしなかったために、パトカーに乗せられ、警官がZXR750にまたがって署まで行くことになった。
 ひどい改造をした四輪車が来て、にやにやしたデブ男が降りて来るや、
「いや~、ケイサツさんには協力しますよ~」
 と言った。警官の話によると、彼が何時何分にどの車種のバイクが入ってきて、何回走ったかをすべてレポートしていたということだった。よく見ると彼は警官の服装の真似をしていたが、シャツはズボンからはみ出し、サングラスを鼻の頭にのせて、なんとも不潔感ただよう男だった。
「気持ち悪い」
 5歳のM嬢はその場で言い、N君は連行された署内でもこの男が闊歩しているのを見たと言った。
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●パトカーで連行される11時間前のN君の笑顔。この日、M嬢にZXR750を発見されたのが運の尽きだった。
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●走行写真。噂通り、伝説のミドリさんのフォームはめちゃめちゃカッコ悪い。俺サがあったら間違いなく「ダブル仏級」だ。
 僕たちが家に帰ったのは午後になってからだった。家の前で前輪のとれた四輪車が止まっていた。盛大な事故で、事故の当事者は全員が救急車で運ばれてしまったために、遅れて到着した警察官たちは困り果てていた。現場には事故について話ができる者がひとりもいなかったのだ。
 そんなわけで僕たちが聴取を受けた。なんとも警官に囲まれることの多い日だった。
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●パープルラインで警察の聴取から解放され、やっと家にもどると、自宅前で大事故に遭遇。またしても警官に囲まれることに・・。