酒匂川青少年サイクリングロード

 朝飯はコーンフレークで簡単に済ませ、風上の海側の部屋から箒(ほうき)で順ぐりに掃いていく。一日でホコリ、髪の毛がけっこう出るのに驚く。八時半、三機のPCを立ち上げ始業。
 午前中はこのままずっとデスクに向かっている。1時間に1回、海のひろがるバルコニーで煙草を吸う。最初のころは晴れて海が青いと気もそぞろになって仕事が手につかなかったが、最近はいい案配である。
 昼食はご飯をたいて卵をかけて食べるか、シラスで食べる。両方をかけるときもある。小田原はとにかくシラスが美味い。毎日食っても飽きない。
 食後は6km離れたスポーツクラブに自転車で泳ぎに行く。1.5kmから2kmを泳ぎ、もどってくるとちょうど1時間強である。アイヤーンマンはいたって効率がよい。雨のときはクルマで行く。こんなときぐらいしかクルマの運転の練習ができないので、雨は雨でよいが、時間は自転車よりも余計にかかる。
 今日は初期関係の構築でやり残している3つのうちのひとつを攻略することにした。
 じつは小田原に来てから、まだサイクリングロードを走っていない。江戸川の流れる松戸はサイクリングロード天国だった。河口から利根川合流地点まで全線50kmにわたって中断のない舗装サイクリングロードがあった。しかし山に囲まれている小田原では立地的に難しいしねとあきらめて、山岳登坂にうつつを抜かしていた。ところが先日、相模原に住んでいるいる友人から酒匂川沿いにサイクリングロードがあるらしいと聞いたので調べてみると、「酒匂川青少年サイクリングロード」という9kmの専用道路が地図にのっていた。
 青少年じゃないけど、中年排除規制とかしているわけではないだろう。しかし一応、青少年を見たら道を譲ることにしようと思いながら、スウィミング用具を背中のバックパックに入れて、折畳み自転車GAAPで出立。
 入口が分からなかったので、適当に酒匂川の土手に出てみると、未舗装の道があった。折畳みながら前後サスペンション、ディスクブレーキ装備のGAAPはダートにも強く、探索にもってこいである。途中、酒匂川に流れ込む支川に阻まれて土手を離脱するも、夏には蛍が乱舞するという小川の水のきれいなこと。これが海からたかだか数キロ。山に囲まれた海の町ならではである。
 鮎釣りの太公望が立つ酒匂川の清流に沿って彼岸花が赤く染め上げるロード。なだらかな丘陵を見ながら、ときどき松並木のあいだをくぐり抜けるのも、街道の情緒である。
 サイクリングロードの終点では、両側に山がせまり、酒匂川は早くも渓谷の顔をみせはじめている。時間があれば足柄峠にまで足をのばせる好ポイントだが、プールに行く途中の寄り道であることを思いだし、もと来た道をもどった。
 プールで1.5km泳いで帰ろうとしたら、競泳水着を着た女の人が、すごいわぁと声をかけてきた。3キロぐらい? いえ、1.5です。
「いっきに泳いでましたよね? なんかやってるんですか?」
「いえ、無目的です」
 帰りの自転車では国道1号線に出たところで、箱根に向かうらしきロードレーサー2機を発見。猛追し、くっついて走った。最後に時速44キロで抜き去り、逃げ込むように家にゴール。これから箱根登坂をするらしき2機は、あほなやっちゃという目でこっちを見て去った。
 全走行50.1km