『ミサイルマン』平山夢明

不思議なことだが、こういうことを始めると自分に妙な落ち着きが出てきた。渋滞にはまっても昔のようにイライラしなくなったし、無理な割り込みをする奴がいても自然と譲れるようになっていた。


 引用文中、<こういうこと>というのは連続殺人のことである。
 スプラッタや猟奇ホラーは好きではないが、平山夢明の各短編は凄惨にはじまり凄惨に終わりながら、なぜか救いの一条に近い情感を読後にもたらすものがある。(もたらさぬものもある)
 また、拷問の歴史は人間の想像力の可能性の歴史だ、というような言葉を聞いたことがあるが、そういう意味では平山の想像力は、既存のどんな凄絶な拷問さえも及ばぬであろう。圧倒的な想像力、そこに引き寄せられて、いやだと思いながらも、また一篇、また一篇、と読んでしまうのだ。


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