稚内を闊歩するおろしや国人

 昨晩、電話で急ぎの仕事が入った。天塩で役場前や巨大アンテナの立っている場所などでインターネットが通じる電波を探したが、皆無。なので稚内まで移動することにした。景色から木が消え、荒涼としたサロベツ原野の中を延々と走る。わずかな夏以外はほとんど氷と雪に閉ざされる自然の厳しさ。マドカにとっては外国のように見えただろう。実際、稚内に着くとロシア人が多く、マドカがびっくりしていた。ホワイトヘッドで巨漢のロシア人がたいそうめずらしかったようだ。
 稚内でインターネットに接続し、仕事の段取りを進めた。千葉で業務上の後方支援をしてくれている青山君のおかげで何とかなりそうだ。
 昼食は朝のうちにマドカがつくったおにぎり。午後はキャンプ場探しで周辺を走りまわった。稚内から南に20kmほど南、サロベツ原野のただ中にある兜沼(かぶとぬま)キャンプ場は何年も前から行ってみたかったところだが、もちろんネット環境は確立できないし、稚内まで少し遠い。とても魅力的な環境だったが、明朝締め切りの仕事にメドがたつまでは、夜に何度もインターネットを確認しなければならない可能性が高いし、今日明日は電波圏内にいたい。
 稚内市街地を見下ろす山の頂に無料のキャンプ場があった。小さな山だがロープウェーが通っているだけあって、登山道がけわしい。非力な1500CCのインプレッサでは一速までギヤを落とさないとのぼれなかった。すれ違いもぎりぎり。場所によっては一方通行。この道を夜に行き来しなければならないと思うと、ちょっと不安である。
 市街地を一望できる場所にテントを設置し、ハンモックも木のあいだに渡した。ここでも通信はできたが、電波が不安定。大きなファイルをやりとりしなければならないので、やはり何度かは市街地まで降りるしかないようだ。
 市街のホームセンターやスーパーマーケットをまわって時間をつぶす。ロシア人が大量に買い物をしている。彼らはリッチにタクシーで移動している。タクシーの運転手も慣れたものである。なんでもこの時期、北海道にカニをもたらしているのは、このロシア人たちということだった。6月15日から近海もののカニは禁漁となるため、もっぱらロシアから輸入している。あちこちの看板も英語ではなく、ロシア語が併記されている。財布がたっぷりふくらんだロシア人たちが闊歩しているわけだ。