オホーツク紋別空港で車中泊

 蟻の合戦場の森林公園をあとにし、紋別市内にはキャンプ場が見当たらなかったので、市街地から南へ10kmほどにあるコムケ沼のキャンプ場を探しに行った。怒濤のようなオホーツクの荒波に吹きさらされたコムケ沼にインプレッサを停めた。牛はいるが人はいない。キャンプ場もどうやら閉鎖されてしまったようだ。マドカとふたりで野小便をし、紋別市内にもどった。
 じつは旅に出立する前に、ぶんぶん新聞の古くからの読者で紋別市内に住んでいるというライダーから便りをもらっていた。計画のない旅ではあったが、飛行機の予約の都合でワイフが紋別空港に降り立つ日程だけは決まっていたので、「紋別」の文字を見た彼は7年間の沈黙を破り、思い切ってメールしたのだという。
 では紋別で会いましょうという返信をそのときしただけで、一か月近くたち、とつぜん「紋別着きました」のメールを入れたのだから、先方の都合も考えずえらく非礼な話ではある。
 双方の通信手段が今のところメールしかなかったのだが、今回はこちらの携帯番号を書いておいたので、運よく早い時間にメールに気がつき、当方の非礼を気にせず、かつまた都合があうという僥倖に恵まれれば、電話がくるかもしれない。しかし、せっかく電話があってもこちらがキャンプ場にいれば会うことも難しい。雨もよいの天気だし、紋別市内をぐるぐる走ったり、港前の定食屋でホタテ丼と海鮮丼といくら丼を食ったりして時間をつぶしながら、携帯電話をときどきのぞいたりした。その間、電話が何本か入ったが、飛びついてみるとどれも仕事の電話だった。
 午後5時。雨が強くなってきたし、そろそろ本気でキャンプ場を探さなければならない。残念だが、こちらのやり方が急すぎたんだし、しかたない。30キロほど北上し、日の出岬のキャンプ場にインプレッサを走らせた。オホーツクの潮気まじりの雨が強く降っている。テント設営はしたくない。バンガローを申込もうとすると、すでにいっぱいだという。ふたたび30キロの道のりをもどって、紋別市内に引き返すことにした。
 雨はどんどん強くなっていく。大型ショッピングセンターで時間をつぶしたり、駐車場で仮眠をとったりして午後9時ごろ、市内からほど近くのオホーツク紋別空港に移動。空港のゲートは閉まっていたが、かえってひとけもなく、車中泊をするにはいい環境だ。セイコーマートで買ったビールの500缶2本を開け、そのままルーフを打つ雨音を聞きながら眠りについた。