浜っ子ライダーと紋別山ツーリング

 目覚めると、北海道上陸以来、最高の好天。
 浜っ子ライダーといっしょに裏山をツーリングすることになった。マドカを群馬女性に託し、いざ紋別山ワインディングへ。彼はNSR250をチョイスし、俺はグース350。FCRが奢られていて、フィーリングは最高。ただし、極度の整備不良。ウインカーはぶらぶらだし、ステップは途中で折れていて、ハンドルもなんか曲がっているような気がする。
 山頂に着き、
「これ、どうしたの?」
「やや、ちょっと転んじゃいまして」
「ちょっとって感じじゃないけど」
「あー、ちょっとお客さんとお酒飲んでまして、帰りにかしゃーん。朝気がつくと、スーツぼろぼろでした」
「単独?」
「単独も単独。だーれもいません」
「カーブとか?」
「いえいえ、停止線でぴたっと止まろうとしただけ」
「停止線でぴたっと止まろうとして、ぼろぼろになるかな」
「いやぁ、ぶわーんって開け開けできて、きゅーっとかっこよく止まろうと」
 分かるなあ。本気で分かるなあ。酒を飲むと、意味もなくカッコよく止まりたくなるその気持ち。だが北海道である。首都圏のちまちました町中とは違う。グースとはいえ、ブレーキのかけはじめは140か150ぐらいは出ていたのだろう。
「よくぞ生きていたと思いました、正直」
 しかしたいへんだったのはそれからである。すり傷をそのままにしておいたところ、破傷風か何かの土着の細菌が入り込み、1週間ぐらいしてバレーボールみたいに膝がふくれた。今でもちょっと足を引きずっている。北海道にはまだ太古の細菌たちが息づいている。小さな傷でも気をつけねばと思った。
 帰りはNSRとグースを交換して走った。NSRの速さには驚いた。しかしやはり整備不良気味。オホーツクの強い浜風で、2週間もすればチェーンが錆びで真っ赤になり、冬場はガソリンが気化せずエンジンをかけることさえままならない厳しい環境。そんな生まれも育ちも道産の浜っ子は、細かいことは気にしないのだ。