ノロウイルス初物、食った、やっつけた、やられた!

 日曜日早朝。酒の飲み過ぎで吐く。れろれろ〜。
 午前7時30分。厳寒、強風、小雨催いの悪条件の中、チャリ(GAAP)に釣竿持って三郷橋たもとに立っている。セオサイクルの練習会の面々は本気の顔。あたりまえだ。セオ主催のチャリレース1週間前。
 釣竿を持っていっしょに走る雰囲気ではなさそうだったので、彼らを見送ったあと、煙草を1本吸って、江戸川を下り、坂川放水路との合流点のワンドで竿を出し、数投。
 寒くて虚しくなってきたので、早々に退散。小雨が降りだす。
 このころから鈍い腹痛。
 ラーメン屋でちょっと控えめに2人前でおさえ、小田原に帰還。
 飯。
 飯といえば、秋になってから1食でコメ3合食っている。おかずもがっぽり。とにかく飯と煙草がうまい。止まらない。
 平日はまいにちチャリ、ラン、スウィムの3つでトライアスロンの距離をこなしているので、運動量からすればほどよいぐらいだと思うのだが、体脂肪は17〜19パーセント。機械が壊れてるのやろと思っていたら、夏に小田原に来た弟に、
「兄貴、わき腹、たるんどるやん」
 と鼻くそで笑われ、なにをサラリーマン空手家、猪口才な、おまえは体脂肪どうやねん、と訊くと、
「ふふ。14パーセント台で安定だなあ」
 ようし、それならうちのイカれてる機械で測ってみやがれ、と内心、ひひ、とほくそ笑んでいたら、クソ機械め、ちゃんと14パーセント台を出してきた。僕が乗ると、やはり17パーセント台。おかしくないですか、これ。なんでマジメに仕事している弟が14で、仕事せずに走ってる僕が17なんでしょう。弟とは人間性をのぞいて、99.9%の遺伝子が共通しているというのに。もっとも、チンパンジーとも99%は共通らしいけど。遺伝子。
 月曜日朝。激しい下痢。鈍い腹痛。だるい。すべての練習メニューを中止。内心、ラッキー。なんか最近、釣りをやっているせいか、餅が上がらんのです。モチベです。
 火曜日。下痢、腹痛がつづく。だるさアップ。うん、これは練習やめましょう。寒いし。ラッキー。
 水曜日。下痢、腹痛。すんごく、だるい。だめですね。練習。ラッキー感がうすれてきた。なんかマジで体がつらいし。高価な葛根湯投入し、半日横になる。
 木曜日。発熱。終日ダウン。どんなに病気になっても、食欲だけは無敵だったのに、なんと、ほとんどまる一日飯を受けつけない。夜、ふらふらしながらイカれた機械にのると、キャホー! 15パーセントじゃないですか。食わなきゃいいんですよ、食わなきゃ。あとちょっとで、14パーセント台。ひとめでいいから14パーセント台を見てみたい。
 金曜日、朝。熱は下がるが、熱の後遺症か、ちょっと頭がふらふらする。食欲なし。これはイケそうだ。もちろん、14台狙いのこと。
 ちょっと仕事をしてから、平塚までチャリ往復。今日は給料日。もらうのではなく、払う方なので、ぜんぜんワクワクしない。というか悲愴でさえある。小田原に三菱銀行がないので平塚まで行く必要あるのだ。タイムリミット午前中。
 帰途、GPSの画面に池の影を発見。湘南台の近く。なぜか釣竿を持っていたりするし、山岳地帯に入り込んだりしてまわり道し、合計49キロ。(けっきょく、ぬかるんだ林道にはばまれて池にはアクセスできず)
 すごいぞ、このウイルス。ぜんぜんお腹が減らない。
 午後の部の仕事をやって、無補給で今度はランニングで出撃。とことん行きます、一生に一度、きっと咲かせてみせます14パーセント(台)。
 ううーん、スウィム2500mでタイムリミット。くもん塾に行っている娘から、お迎えに来てコール。
 たったか走って小田原にもどり、ランは合計12.9km。
 そのまま夕食の買い物にスーパーへ。腹は減っていないものの、のどが渇いてつらかったが、へんなもの飲んで体脂肪上がったら悲しいので我慢。
 家に帰って、カメラを用意し、いざイカれ機械へ。しっかりやれよ、この野郎、と気合を入れてのるも・・、も・・。



17.1%


 あ、上がっとるやないデスカ! しかも、まったく元にもどってるやないデスカ。
 うらーっ、このイカれぽんち、と機械をけたぐり、すると、なぜか腹だちまぎれに猛烈に腹が減ってきて馬鹿食い。
 ワイフから連絡があって、今年は例年よりも早くノロウイルスが流行、初物水揚げは三重県とのこと。症状は下痢、嘔吐、高熱。ぴったりだ。ノロ。(吐いたのは酒のせいだが)
 体脂肪は不発だったものの、あらたな身体の神秘にせまることができた。
 今までの僕の最大の弱点は、ハンガーノック・・と思っていたが、ノロのおかげで、じつは飯を食わなくても走れることが分かった。エネルギー不足で突如、体が動かなくなる「ハンガーノック」ではなくて、僕がいつも襲われるのは、単に腹が減って動けない、ただそれだけだったことが証明されたのだった。
 くもん塾での娘の言葉が蘇る。
「寝てたの?」
「走ってた」
「病気じゃなかったの?」
「うん。病気」
「どっか行った?」
「平塚までチャリ往復、ダイナシティまでマラソン、2500m泳いで、また走ってもどってきた」
「アタマおかしいんじゃない?」
 小学三年生にそう言われた。