破水(はすい)願望とウェットな男の一日

 日曜日。
 早朝からワイフと娘が東京に行ってしまったので、ひさびさに男の時間、ここはひとつ750cc(ナナハン)のモトチグレッタでどびゅーんと峠に行きたいところだが、手もとに肝心のモトチグレッタがない。あったとしても、雨である。
 とういことで、朝早くから毛鉤(けばり)をまきまきしているわけである。
 最近はウェットのハックルものが中心。というのも、過日、ついに覚悟を決めて高価な素材であるハックルを買った。釣り針にハックルを巻いていると、ワイフと娘がくれとせがむ。アクセサリーにするのだという。
 娘はランドセル、ワイフはケータイにソフトハックルの毛鉤をつける姿を想像したところ、なかなかハードボイルドな女たちであるな、と思った。
 日中は仕事をして、夕方からスウィムに行った。
 ひさびさにウェットスーツを着て泳いだら1500mで腕が動かなくなった。平泳ぎを入れて筋肉をほぐし、なんとか2000mまで泳いだが限界。
 ウェットスーツを脱ぐと体がずいぶん楽になって、あと1000m泳いだ。
 ウェットスーツを脱ぐ瞬間、体熱であたたまった温水(おそらくそうとう汗がまじってしょっぱいはずだ)が、じょわわーっとウェットスーツからこぼれ出る。どういうわけか、この、じょわわーな感じが、もうぞくぞくするぐらい、すごおく好きである。おしっこを思いっきり漏らした感じがするからかもしれないが、そうすると、私は潜在的におしっこ漏らしたい願望があるということになる。でも、正確に言うと、おしっこというより、破水、というイメージである。産みたい願望があるのかもしれない。
 アイヤーンマン・トライアスロン・ジャパンの本番は、いっきに3800mをウェットスーツを着たまま泳がねばならない。じょわわーが楽しみである。あと3ヶ月。じょわわーの前に、こんな調子では完泳できぬかもしれない。
 毛鉤など巻いている場合ではないのであった。しかし家にもどってから、また毛鉤まきまき。
 ウェットな一日。