いつもいっしょなんだね

 伊豆の池にふな釣りに行こうと妻子とクルマで出発した。箱根越えの前に腹ごしらえと思ってパーキングにクルマを寄せると、妻が「あのバイク、bimotaってかいてるよ」
 いまどきビモータなんて乗ってるのは、まあそうとうの変人にちがいないと思って目をやると、青いマッシモ卿のオートバイクであった。
 マッシモ卿とは二十代のころからのオートバイづきあいである。
 僕がオートバイからチャリへと退化し、トライアスロンに興じるようになってからも、能登半島先端で開催される大会スタート前にとつぜんオートバイで現れるような変人である。(このときの記事

 これがそのときの写真。2006年である。
 そして今回の写真。この人は何も変わっていない。十五年ほど前に初めていっしょに走ったときから何も。

 むかし、手賀沼の田園地帯をマッシモ卿とオートバイクで走ったことを思いだした。僕らのほかにふたりいた。マッシモ卿と仲のよい盟友ハバさんと、仲のよくないめるへん男。仲のよかったハバさんはもうこの世にいないし、仲のよくなかっためるへん男も脳死状態でこの夏を越せるか分からない。
 僕はオートバイからチャリ、そしてふな釣りに退化を進めたが、マッシモ卿は乗っているものも、やっていることも、姿かたちも何も変わらない。
 変わらないことってすごいな、と思った。
 彼と別れてクルマをだすと、妻が言った。
「ハバさん、いつもいっしょなんだね」
「見えた?」
「そんな気がした」
 バックミラーにちらっと一点の光が見えたかと思うと、右脇を甲高い排気音とともにマッシモ卿の青いオートバイクが駆け抜け、あっというまに箱根の山なみに消えていった。
「カッコい〜!!」娘が叫んだ。