事故相手と飲み会

 医者に安静にと言われていたので、一日おとなしくした。
 朝7時から夜7時まで飯も食わずに、ぶっ通しで机にかじりついていたら、予定より1日も早く仕事が終わった。娘が海外旅行に行っていて家にいないので、ひさびさの自由だったが、飲む相手もなくてぶらぶらしていたら電話がかかってきた。事故相手の青年だった。
 小田原駅で待ち合わせると、青年の母親もいっしょに来た。ちょっと拍子はずれだったが、三人で居酒屋に行った。
 ひととおりのやりとりのあと、ふつうに飲んで話そうと思い、なるべくクルマとか事故とか連想の連鎖につながらない話題を選んでみたが、けっきょくは相手のお母さんが「すみません」と頭を下げる方向に収束してしまい、なごやかではあったが、あまり盛り上がらなかった。加害者と被害者といった構造は簡単には壊せないのだなあと思った。