気合療法2

 朝がたは38.5度。ふとんはあたたかで得も言われぬ心地よさ。時空を超えて宇宙を構成するさまざまな事象の断片がきれいに収束していくのを感じ(それはちょうど銀河のような動きをしていた)、なんで今までこんなにシンプルなことに気づかなかったんだろうと思った。
 やや遅めに起きだした以外は通常業務につく。午後、病院に行った。インフルエンザB型。1分にも満たない診察時間のために2時間を費やした。
「でも、48時間以上たってるから、薬、意味がないかもしれません」と医師。
 インフルエンザは感染してから48時間以内が勝負なのだという。そういえば昨晩、ワイフも同じことを言っていた。
「熱があると気づいてから何やってたんですか?」
 と言いつつ無関心そうな医師の態度だが、わずかに批難の色がにじむ。僕は気合療法についてざっと説明した。
「気合とかそんなこと言ってる人がいるから、人にうつして迷惑かけるんですよ」
 俺はすっかりしょげて家にもどった。帰ってきたときは39.1度まで熱があがっていた
 しかし悪寒がするほかは、寝込むほどでもなくふつうに業務に復帰した。ただ、朝がた覚醒した、すべての矛盾を解消する銀河の内容は、どうやっても思いだせなかった。