ネオンがまたたきはじめた夜の東京が車窓を流れるモノレールの車内で、少年がピンクのスーツケースをだいじそうに抱え、へこんだ傷を時折さすっている。スーツケースの中に死んだ妹が入っているとは、誰も知らない。
親のネグレクトのために、4人のきょうだいだけで極限の生活のなかで生きていこうとした実話にもとづく映画のオープニングだ。この『誰も知らない』を観て、わが娘の甘っちゃれた態度に憤りを感じた。手伝いを頼んでも、ごはんだよと言っても、ぐずぐずする。叱責したら泣きだした。
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
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今度は、新聞の夕刊に出ていた少年の写真に釘付けになった。
苦心して自分で結びつけたのだろうが、ひもで負ぶった赤ん坊はすでに息絶えている。原爆投下後の長崎。仮設の焼き場で順番を待つ直立不動の少年。その指先の厳しさ、重みに耐えながら直立を保とうする前のめりの姿勢、固く真一文字に結んだ唇。少年は赤ん坊が焼かれるのを直立不動のまま見届けると、涙を見せずに去った。去りぎわ、少年の唇の端に血がにじんでいるのをカメラマンは見る。(Joseph R. O'Donnell「焼き場に立つ少年」 September 1945)
この写真を見ていると、今度は無性に自分に腹がたってきた。
だめになってる場合じゃない。