ランニングの心強いお供

 きたさん。
 と、呼んでいる。
 センスの悪い巨大な腕時計。
 に、見えるが、じつは超小型GPSのGARMIN社製ForeAthlete(フォーアスリート)301。
 自分の位置が衛星から捕捉され、走ったルートや距離などがデータとして蓄積される。ラップを設定すれば、たとえば5kmごとのタイムなど、自動的に計測し、データ蓄積。
 画面は何通りかのカスタマイズが可能だが、基本的に、心拍、距離、ペース(キロあたりの所要時間)、タイムで構成される。その他、休息時間や平均心拍なども表示可能だ。
 マルチスポーツ対応なので、チャリにも対応。トライアスロン実戦では、トランジットタイムにも対応。至れり尽くせり。
 マップモードにすれば、適当な道を走っていて迷っても、登録した地点(スタートやゴール地点など)に向かって正しい方角を示してくれる。いきなり京都の町中を縦横に走りたいとか、赤城山中を弾道クロカンしたい、などと変な衝動が起こっても、安心だ。
 ただし欠点もある。
 まず衛星を捕捉するまでの時間が意外とかかる。条件が悪いと(まわりに高い建物があったりとか)、スタートするまでに煙草の2、3本は吸う時間がかかる。ひとりならいいが、仲間と走るときなど、現実的には使えないシチュエーションも多そうだ。
 それから心拍計がむちゃくちゃ。ありえない数字。あるいはたまたま故障しているだけなのかもしれないので、輸入元に問い合わせてみるつもり。
 あと、けっこう困っているのだが、毎日使っていると、ひどく匂う。汗が布バンドにしみこみ、蓄積し、やがて悪魔的な状況になる。バンドははずせないから、洗濯機でじゃぶじゃぶというわけにもいかない。
 走りながら匂ったりすると、痛烈な刺激臭で失いかけていた集中力を取りもどすことができる。そういう意味では長所といえるかもしれないが、あまりやりすぎると癖になりそうで怖い。みやここんぶと同じだ。
 欠点はともあれ、蓄積したデータはパソコンに落とすことができて、専用ソフトで日ごと週ごと月ごとの合算距離や、個別のラップタイムなどを管理できる。走ったルートも地図上に表示できるので、これがけっこう楽しい。
 ひとりで走るのが退屈なときは、腕時計の中に小さなこびとを呼びだして、設定したペースでいっしょに走ることもできる。こちらのペースが落ちると、こびとから遅れる。遅れた距離も表示される。こびとは律義にペースを守って走る。こっちがどんなに遅れても、ほんとに律義に走る。情けはない。
 この律義な彼こそが冒頭の、きたさん、である。