自動車教習7時間目(第1段階)オートマ教習

 はじめてオートマに乗った。なんとも楽な乗り物だ。狭路を中心に練習したが、昨日、車幅感覚の神が降臨したので問題なし。オートマ車終了。
 つづいてマニュアル車にもどって狭路。これも問題なし。坂道問題なし。
 ・・と思っていたら、教官に、
「おたく、大型バイクとって15年たってんだ。どうしたの急に?」
「あ、あの、なんというか、風のきまぐれというか、いや、そんなんじゃなくて、ほんとは生活とか、革命とか・・」
「ほら前! ちゃんと前見てないとバイクひいちゃうぞ」
「すんません」
「で、どこで免許とったの?」(どの教官も必ずこれを訊く。教官マニュアルにあるんだろうか?)
「限定解除だったんで、なんというか、試験場っていうんですか?」
「でさ、おたく、バイクぶいぶいやってんでしょ」
「えっ? ええっ?」
 知らないふりをして、ちらと駐輪場の高踏的ドカティを見やる。隠して入れたつもりが、真っ赤でツンとあがったケツがちらと見えている。
「あのね、運転荒いの。イニシャルDじゃないんだから、そんな気合入れてギヤ変えなくていいの」
「りょ、りょうかいです」
「だからー、気合入ってるって。三十路(みそじ)もなかばなんだから、もっと落ち着きなさい」
「落ち着き落ち着き」と言いつつ、かえってあたふたする。慣れないことをやろうとすると、とたんにすべてのプログラムがおかしくなり、ハンドルくるくるも混乱、クラッチとブレーキを混乱、ギヤをローに入れ忘れて二速発進・・と、もう無茶苦茶。
「じーちゃんになった気で、あーだるいなーって感じでやるといいんだけどさ」
 じ、じーちゃんですね。了解。じーちゃん、じーちゃん、と。
「だからぁ、気合入ってるってば!」
 教官の声にいらだちが混じる。
 じーちゃんじーちゃん、ほへへ〜、わしゃぁムラ一番の頑固者じいちゃん・・がこん。
 がこん?
「あ〜あ〜、後輪ぶつかっちゃった」
「あのぅ、やっぱじいちゃんやめていいすか?」
「おたく、若いねえ」
 と、嫌みを言われつつ、イニシャルDにもどったら動揺はおさまった。終了まぎわに、
「まー、ほんとは別に問題はないんだけどね、やっぱ無駄をなくした方がいいでしょ」
 おりゃああ・・問題ないなら慣れないことやらせないでけろ。じいちゃんはじいちゃんでも、しゃっちょこばってるじいちゃんだっているんだもの。と、やや落胆気味の本日の教習であった。