道内屈指の阿寒ホテル

 根室をまわりたかったが、今晩は阿寒湖で宿が決まっていたので、あきらめてパイロット国道を東西進する。阿寒湖まで100km近くある。
 じつは紋別で、道産浜っ子ライダーから道内屈指の宿をおしえてもらっていた。金融機関勤務の彼は仕事がら高級宿に強く、その彼が口うるさいおばちゃん軍団をも唸らせる隠しワザとして持っていたのが阿寒湖の「鶴雅」である。だめもとで電話すると、偶然にも空き部屋を予約することができた。
 鶴雅に着いたのが午後5時。疲れ果ててホテルの前に乗りつけると、ドアマンが荷物をカートに乗せてくれ、クルマを駐車場まで持って行ってくれた。
「自転車積んでますし、あとで駐車場から玄関前に移動させておきます。その方がご安心でしょう」
 と、ドアマン。なんたる気遣い。いきなり満点満点満点の採点官一同。
 客室係がつき、ホテルの中の説明に15分。トイレは記念撮影をする観光客もいるとか。風呂は男性が地下、女性は八階。一〇時から入れ替え。一階の池にはマスが泳ぎ、2階はフロアー全体が池になっていて、まるで島のように個室や割烹が浮いている。客は小さな橋を渡って島に行くという凝った趣向である。水の中をのぞくと、なんとなんと泳いでいるというか歩いているのは毛ガニ、タラバガニ、毛ガニ毛ガニ毛ガニタラバガニ!!

 さらに特筆すべきは風呂。すごい。すごすぎる。まるで「千と千尋」の湯屋だ。地下と聞いて最初がっかりしたが、立体迷路みたいな和空間。洞窟風呂の中には湯の川が流れ、のぼっていくと小さな滝壷。
「うわー、マドカすっげーぞここ。来てみろって」
 裸ではしゃいでしまう俺。桧風呂の上には階段でのぼる空中休み処が浮いている。露天風呂は阿寒湖の水面と5メートルも離れていない。岬の先端に風呂があるので、ボートを使わなければ入り込めないようになっているので、余計な目隠しもなく、阿寒湖の夕暮れを満喫できた。
 夕食はバイキング。和食、中華、イタリアンと300種もの料理がならぶ。俺は和食専門で攻略。ホタテ刺を30個食ったところでギブアップ。ツブ貝50個ばかりをつまみにビールを飲む。
 ロシア人演奏家のミニコンサートや、アイヌの語り部の夜とか、いろいろな無料インベトもホテル内で開催されていたようだが、俺はもうだめ。ギブアップ、御馳走様。ふとんにも入らず、行き倒れみたいにそのまま朝まで大イビキ。
 朝食バイキングもまたびっくり。昨晩の饗宴と同じような構成である。ツブ貝刺し身をいやというほど食った。

●走行:398km
●食ったもの:イクラ丼、ホタテ刺30個、ツブ貝50個