小田原ナイト探索の面目躍如

 家に着くと日暮れ間近だった。急いで3人分の自転車ジャージを洗濯し、海側のバルコニーに干す。
 そして本日の耐久第二部の小田原ナイトへくりだした。男3人、女2人、女児1人の6人で、おしゃれ横丁にある海鮮居酒屋へ。
 たまたま隣の席に、東京から輪行で小田原を経由し箱根越えをしてきた3人のチャリダーがいて、自転車談義に花が咲いた。箱根駅伝のランナーと自転車とどっちが速いかの話題になり、彼らは2時間半かけて芦ノ湖まで上ったという。駅伝が50分ぐらいだったから、やはりマラソンの方が速いようだ。
「でも下りなら負けませんよね」
「んだんだ」
 駅伝のルートとは違うが、旧街道の方はどうかと訊ねると、勾配がきついから上ったことはないそうだ。どのくらいで上るのかと訊かれ、43分と答えると驚いていた。(酔っぱらって間違ったタイムを言っていた。箱根湯本〜芦ノ湖では46分が正しい)
「でも、気合入った人には、ばびゅーんってブッちぎられちゃいますよ」
 今日の富士スピードウェイで、後半、さんざん実業団にブッちぎられたのを思いだしながら言った。結局、トップには3周か4周かラップされた。何周ラップされたか分からないほどの大差である。今日の酒は苦くてじつに身にしみる。酒の肴は辛酸にかぎる。
 宴もタケナワで6時間経過。もはやどのぐらい飲んだか覚えていない。
 二次会は本町へ移動。駅前は序の口。たかだか100年ぐらいの歴史。駅から10分ぐらい離れているが、ここ本町の飲み屋街である宮通りは戦国時代からの由緒正しい盛り場である。しかし酔っ払いすぎたのか、探索の成果を思い出せない。裏通りの裏、そのさらに裏の猫道みたいな路地を抜けたところにある店の場所が思いだせない。娘とワイフは離脱し、家で待機し後方支援にまわり、残る4名はばらばらに別れてマラソンで店を探す。
 この店、ここ数日はスーパーに行くついでに毎日娘と場所を確認していたはずだった。しかし酔っぱらうと、まったく分からない。狭い一角なので、あっちの通りで宮さまが走っているのを見たと思ったら、こんどはこっちの通りで走っているのを見たり、夜の繁華街で俺たち何をやってるんだ??
「しっかし、ほんと、みんなノリがいいなぁ」
 と、ぜえぜえ息を切らせながら感嘆の声をあげると、NKロケッツキャプテンの奥方であり、トライアスリートでもある、みみちゃんが毅然と言い放った。
「わが家では、誘われた飲み会は断らないという家訓があるんです」
 どうにか目的の店を見つけたが、すでに暖簾はしまわれていた。宮通りの店じまいは早い。近くに一軒、暖簾のでている居酒屋を見つけて突撃。あらためてビールの乾杯からやり直した。しかしここで思わぬ番狂わせが発生。アルコール耐久の部で第1シードの宮さまが、まさかの眠りこけリタイア。みみちゃんに連れられ、うちに回収された。
 残ったキャプテンと俺は三次会のナイトパブに向かった。さすが誘われた飲み会は断らない家訓。しかしこの時点で午前2時半をまわり、フィリッピンパブ「マリポーザ」は閉店。オープン記念2000円の看板に誘われ、新規の店で歌を歌いまくり、女の子に触りまくって午前4時。
「アフターなんて、どうお?」
「このあとミーティングなんですぅ」
「ありゃま。んじゃ、キャプテン、うちらもそろそろ出立しますか」
 うなずくキャプテン。さすが断らぬ家訓を持つ九州の男である。
「え〜、どっか行くのぉ?」
「仙石原にススキなぞ観賞しに」
「酔っぱらってんじゃーん」
「あいや、チャリだし」
 冷静に考えれば、同じ飲酒運転、クルマの方が安全だったかもしれない。