ワーゲンバスの気分

 膝の痛みが治らない。ランニングは銀行まわりや娘の送り迎えなど、休み休みの3km程度にとどめる。ストレッチも入念に行なう。身体のパーツが古くなっていることを感じる。マーケットの肉売り場で「赤鶏の膝軟骨」というパックを見てドキッとした。
 年度末で仕事に忙殺。心を亡くしておのれを殺すという字は正しい。
 外は桜祭りの準備で提灯が揺れている。のに、ずっとパソコンの前にすわっている。
 「ワーゲンバス」の本を眺めると、気持ちが慰む。
 いっぱいになった灰皿。窓枠のガタ。赤錆。
 子どもをぎゅうぎゅうに積み込んで、ルーフには小さい自転車をぎっしり立てて、半島に行ったら愉しそうだ。
 自分の体が旧式になってきたせいか、古い機械への愛着が増してきた。

ワーゲンバスの気分。   エイ文庫 (022)

ワーゲンバスの気分。 エイ文庫 (022)