小田原の夏

 小田原移住を検討してから1年、実際の移住から、はや10ヶ月半あまりが経過した。
(写真は、列島弾道バトルツアー「西漸運動開始」より 2005)
 四季を通じて、とにかく気候が絶好! 人柄もよく、それは何より地元のクルマの運転やゴミのマナーによく現れている。
 生ゴミが収集日前夜からネットなしで歩道に整然と並べられている様子は、もはや首都圏ではほとんど見ることができないだろう。
 クルマの方は、がらがらの深夜でも車間距離をとって、制限速度近い速度で走っている。整然としている。
 東京や千葉にクルマで出かけると、小田原癖がついてしまってのんびり走っていると、おもしろいぐらいに割り込まれ、あおられる。都会ではキビキビ走らないと迷惑になってしまうようだ。みんな車線変更をこちょこちょやるのが、見ているだけで目がちかちかしてくる。
 首都圏ニュースで連日、梅雨の中晴れで蒸し暑い日がつづいていると言っているが、今ひとつピンと来ない。
 打合せで東京に出て、なるほど、と思った。午前10時からの打合せで、9時半ぐらいに近くの公園で煙草を吸っていると、なんか体がムズムズする。打ち合わせが終わって正午のビル街を歩いていると、だんだん気分が悪くなってきた。体中から汗が噴き出る。服が体にへばりつく。
 蒸し暑い、という感覚を久しぶりに思いだした。
 午後3時。小田原に戻ると、ふつうである。
 なるほど、小田原は気温は高いが、海風が吹きつづけているので、からっとしているのだ。
 日没前後、いったん風が凪ぐ。しかし数分後、昼間とは逆方向の陸風が吹きはじめる。
 毎日このリズム。そういえば昨夏は一度もエアコンを入れなかった。今年はどうだろうか。今のところ、まったく必要なさそうである。
 しかしこんな小田原も心配な材料はある。
 2006年は高層マンションの建設ラッシュ。地元の反対でずっと動かなかった建設が、いっきに動きだした。もういたるところでマンション工事が行われている。駅前もマンションを含めて大規模な再開発が進行。
 カラスを町中で見るようになった。昨年はほとんど見なかった。
 数が増えてきたと思うと、けっこうな勢いで広がっていくのを感じる。だんだん人とカラスの距離が近くなっていくのが分かる。ゴミの平和も今年が最後かもしれない。
 それでもまだ小田原の魅力は尽きない。毎日、いろんな瞬間に、なんていいとこなんだろうと実感する。ワイフは連日、小田原に家がほしいと言い、マンションの広告なんかが、置き手紙のようにテーブルにのっている日もある。僕も、最近は、ともすると小田原永住に気持ちが傾きつつある。
 否否! 西漸運動をやめるわけにはいかない。わが家の平穏は、移動しつづけることで支えられている。遊牧民の定住は堕落。この愛すべき地とも別れなければならないと思うからこそ、日々が、四季がいちだんと胸に迫る。
 未体験の小田原も7月を残すのみ。
 朝、煙草を吸いながら何となく海辺に出たら、海の家の建て直しが進んでいた。海びらき、そして御幸が浜花火大会も、まもなくである。