夏休み最後の日曜は

 夏休み最後の日曜は、一家でトラック練
 初の試みである。
 行きがけにホームセンターでストップウォッチを買ったら、俄然、気分が出てきた。やはり道具から。


 近所の酒匂川サイクリング公園で、1周700mの内側トラック3本、1kmの外周トラック2本のインターバル走。
 ストップウォッチを手に、ワイフ→娘→僕 の順番でひとりずつ走る。全力疾走。
 アクセル全開で走るなんて、中学校以来?
 
 途中からは足がもつれ、呼吸が荒れて、吐きそうになる。
「陸上部で吐いてる人の気持ちが分かった」とワイフ。
 娘は最後は泣きながら走っていた。汗より涙の方が多そうだ。からかうと、
「汗も涙もいっしょだよ」と目を釣り上げた。


 雨上がりの晴天で、箱根から足柄山までの尾根がきれいに見渡せ、風が秋の匂いを含みながら、酒匂川の先の海へと抜けていく。秋は海から来るのか、山から来るのか、そんなことを思いながら、トラック練の感想を交わす。
「ちょっとつらすぎちゃう?」
「ひとりでこれやってたら、ヘンタイだね」
「景色もなし、タイムだけ。ストイックすぎ。石垣山の方がいいね」
 だいたいそんなところに着地点を見いだそうかというところで、苦しそうだったワイフが、最後に、
「これ、毎週やろう」
 無言の娘と僕。
 夏休み最後の思い出が、汗と涙のトラック練とは。
 家に帰ると、手賀沼トライアスロン事務局から、ずっしりとした金色のメダルが届いていた。やはり噛んでみた。