一句を書くことは一片の鱗の剥脱である 四十代に入って初めてこの事を識った 五十の坂を登りながら気付いたことは 剥脱した鱗の跡が新しい鱗の茅生えによって補はれてゐる事であった だが然し六十歳のこの期に及んでは 失せた鱗の跡はもはや永遠に赤禿の儘で…
秋風や水より淡き魚のひれ (三橋鷹女『魚の鰭』) 橋の欄干によりかかって川面を見ていると、水量の少なくなったゆるやかな川面にゆらゆら揺れているものが見えた。水温が下がったせいか、いくぶん元気のない大きな魚で、よく見ないと見落としてしまう。水…
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