魚のひれ

秋風や水より淡き魚のひれ  (三橋鷹女『魚の鰭』)

 橋の欄干によりかかって川面を見ていると、水量の少なくなったゆるやかな川面にゆらゆら揺れているものが見えた。水温が下がったせいか、いくぶん元気のない大きな魚で、よく見ないと見落としてしまう。水の流れなのか魚のひれなのか、小さなよどみがいつまでもゆらゆら揺れていた。