自動車教習第1段階みきわめ

 雨の土曜日午前8時30分。第1段階最終時限の「みきわめ」の今日は、なかばレジャー感覚のワイフと娘がきゃっきゃっと言いながらついてきた。
「おとーさんがクルマ運転してるんだってー。嘘みたいー、見てみたいー」
「ホント運転できんのー?」
「ほんまやて」
「きゃー」
「こわーい」
「あのなぁ」
 ついさっきまで、娘の第3次尿検査の話題でシビアな一家になっていたばかりなのにである。潜血と蛋白が2度にわたって検出され、このあと病院に精密検査にいく予定になっている。
「どんな結果になっても、北海道は行こう」
「うん。もしこの子に何かあっても、腎臓4つはあるしね」
 じ、じんぞう4つって、まさか俺のも数に入ってんのかな。なんてシビアな表情になっていた矢先だったが、予定外のギャラリーに緊張してきた。縁石にでも乗り上げようものなら、きゃー乗り上げたー、きゃーカッコわるー、きゃーきゃー、なんてことになりかねない。
 みきわめ開始。発着点にもどるごとに娘が手を振って待っている。
「娘さん?」
「はあ」
「奥さんは免許もってるんだ。何乗ってんの?」
 ちょうど教習所横にうちのインプレッサが停っているのが見えていたので、あれですと指さすと、
「へえ。マニュアルだ。奥さん、走り屋とか?」
「どうなんでしょう」
「イチハラさんもあれ乗ってんの?」
 乗ってるって、今、ワタクシは乗るための免許のために教習をしているのですが、どうもワタクシが一身上の都合でこうして教習をしていると教官は勘違いしているようで、つまり免許取り消しになったのだと思われているみたいだったので、やだなぁ取り消しじゃないですよ、と言うと、
「あ、そうなの」
 こうしてなごやかに第1段階みきわめの時間が終わった。明日は修了検定である。