自動車教習 修了検定

cippillo2005-06-12

 コースは当日発表。オートバイの試験と違って、横で教官が指示をしてくれるのでぜんぜん楽である。同じ日に修了検定を受けるのは、オートマ車20人、マニュアル車5人ぐらい。俺は先発隊。のぞむところだ。
 さて走りだす。安全確認抜かりなし、完璧なスタート、完璧な進行、クランク、坂道、S字も危なげなし・・というところで、ちょっと色気をだして職人技を披瀝せんとS字の出口を思いっきり小回りしてやろうと左に切ったハンドルをいったんもどし、いっきにまた左に切る、うくく、うまく行きましたよ、後ろに同乗している受験者も顔がビビってるし、うくくうくく、はっ!
 左に出していたウインカーが切れとるではないですか。職人芸のためにハンドルをもどしたとき、ウインカーが自動キャンセルされてしまったのだ。何かをこちょこちょ書き込む試験官。くっそ〜、くやしいです実に慚愧の念にたえないでありますなんて思っていたら、
「お、おい、そこ左折だよ」
 あっちゃー! 交差点まで10mを切っている。とっさに、
「あ、もう一周まわります」
 と宣言して直進。一周余計にまわって左折。歳のせいか、集中力がこのへんであやしくなり、失敗のことが頭をぐるぐるまわる。
 踏切。
 この教習所の踏切は小高い丘のようで、左折をしながら半クラッチで坂道を微速前進し、停止線のところでサイドブレーキ、左右を確認しての坂道発進となり、じつは最大の難所。ちょっと苦手意識もあったが、サイドブレーキを解除した途端、ががーっと後退、ブレーキを踏まなきゃいけないはずが、間違えてアクセルを踏み込み、ブレーキと混乱してクラッチをめいっぱい踏み込んだものだから、エンジンがブバウォーーンと唸りを上げ、後退速度加速。あちゃー検定中止だこりゃあ!と混乱のまま回復運転、おいクラッチ踏んでたらあかんではないかとクラッチをぽんと戻したら、がっくん、きょきょっ! きょきょってホイルスピンの音? 試験官と後部座席の受験生の頭部がぐわんぐわんと振子みたいになる。うれしそうな顔を押し隠す受験生、渋い顔の教官。むむ、踏切前の急加速なんて明確に危険行為じゃないでしょうか、即検定中止のはずが、そのまま坂を下りながら見通しの悪い交差点通過、右折ウインカーのまま右折レーンに入り一時停止と、体制に入るや、
「きみきみ、ここは左折だよ」
 もうやけっぱちのラ・マンチャの男、確認もせずに強引にウインカーを右から左に、勢いあまってライト点灯、右折レーンから強引に横切って左折レーンに、車体は斜めのまま一時停止、もうあとは知るかと、ばぼーと加速、外周へ。
 しかし待て、ここは大人、クサらず行こうと冷静を保ちつつ、発着点に確実に停車。停車措置を丁寧に行い、安全確認、降車。クサってない、うん、大人だなあ俺って、とここで気を抜いてしまったのか、ばたむっ!とドアをぶん投げて閉めてしまった。あちゃー、やっぱクサっとるではないか。
 こんな感じで発表までの1時間半はクサりまくり、図書館で借りた「変身放火論」という書物を読みクサった。
「はい、発表します。最初、あなたね。うん、やっぱり踏切ね。ちょっと後退が大きかったね。あとS字とクランクのあと、ウインカー切れちゃったね。うん、結果からいうと、合格です」
 うなだれてうなずいていた俺はそこで、はあ、と間抜けな顔をあげた。
 試験官は残りの二人の講評に入っている。二人は課題を無事クリヤーしていたが、安全確認のことでかなりくどくどと注意されていた。「で、ふたりも結果からいうとぎりぎり合格です」
 今日の合格は、東大合格、限定解除一回目合格を含めて人生で驚愕事件トップ3入り間違いなしだ。いずれも合否のある試験であり、予想もしない合格という点で共通している。本番に滅法強いラ・マンチャの男は健在。それにしても毎回実感するのは、人生、あきらめてはあかん、クサってはあかん、ということである。
 家に帰って報告。すでに試験終了直後に電話でダメだったと失敗内容を伝えてワイフに大笑いされていたので、合格の報に新たな爆笑。
「それって落ちる人いないんじゃないの?」
「よっぽど前半がカンペキだったんだね。崩れるまでは」
 気が早いと言われそうだが、でもほんとうに気の早い俺はさっそく「仮免許 練習中」のプレートを2枚つくった。これをつけてワイフでもちょんと横に添えたら、合法的に北海道を一周ドライブだってできるのだ。「仮免でチャレン! 北海道一周4400km」
 いいアイデア発生。かちゃかちゃかちゃ。できあがった新しいプレートは、
「仮免許 北海道一周中」
 「練習中」じゃなんか気合感じられないし、こっちの方がいい。祝福感に満ちている。ん、でも字数の関係でかなり上下のバランスが悪い。プレートは寸法が決まってるし、しゃあにゃあ。かちゃかちゃかちゃ。
「仮免許 演習中」
 うんうん。北海道っぽいですよ、ぐっと北海道っぽいですよ。字数も「練習中」と同じだし、実弾演習ですよ、ガトリング弾、ばんばんぶっ放しますですよ。気合入ってますね、これは。
 次の第2段階はカリメン発行後になるので、わずかなあいだだが教習生活もお休みである。
 

変身放火論

変身放火論