自動車教習1時間目(第2段階)路上出撃

 路上出撃である。
 いよいよ路上に出るときは、さすがに、いいのかいいのか、獣を野に放つのかと思ったが、たずなを握った調教師が横にすわっているのだから、いいんでしょうね、何かあったら僕を止めてくださいと心で念じつつ、じりじりっとオリから出た。加速にもたつき、3速以上をまともに使うのははじめてなので、いちいち目で確認するが、そのたびにクルマはぐらっと左に寄る。あやしい動きに警戒したクルマらで背後は渋滞。いきなり獣むきだしだ。
 そうそう、カリメンなるものは教習原簿にホッチキス止めされていた。持ち出し禁止ということか。すでに「仮免許 練習中」のプレートもつくったというのに、がっかりだ。教官にたずねると、一応教習所としては推奨していないが、ゴールド免許だし(ほんとは失効ゴールドなのだが)、許可がおりないとも限らないから相談してみれば?とおしえてくれた。
 4速から減速するときにブレーキより先にクラッチを切ってしまい注意された。オートバイの感覚では4→3→2→1を、ばうーん、ばうん、ばうっ、ばぼ、と減速するが、しるるるる、る、と、4→1のクルマの感覚になかなか慣れず、エンストをおそれてついクラッチを切ってしまう。これは杞憂であり、4速でも低速でごりごり走るクルマのトルクには驚いた。
 発進時は、トロすぎ、とにかく加速せよ、もっと踏み込めと指導され、さすが所内のシミュレーション的なオートバイの教習と違って、クルマの路上教習は流れに乗る実戦を重視される。それにしても、よくあおられる。せちがらい世の中を感じた。
 免許取消で教習を受けていた暴力団のおじさんが、一般車にあおられて急ブレーキ。後ろのクルマを止めて、「おら、なんか文句あるんかこら」とはじまって、教官があわててとりなしたなんてこともあったらしい。
 後ろを気にしていると、ついついスピードがあがってきてしまう。うっかり70キロまでだしてしまった。
「ちょっとだしすぎだね。落しましょう」
「はひ」
 教習所にもどってくると、すぐ横で警察がネズミ捕りをしていた。せちがらい世の中を感じた路上初日だった。