土地と気候(ODAWARAインプレッション1)

 ワイフが言うには、小田原の気候は地中海に似ている。相模湾に臨み、西は真鶴(まなづる)、東には湾曲して三浦半島へと長い浜がつづいている。盛夏にやってきたが、日差しは強いが浜風がたえず吹いていて、むしろさわやかである。夜になると風向きが反対になり、山から海へと風が抜ける。けっきょく夏のあいだ、浜と城山にはさまれている土地がらか、エアコンは一度も使わなかった。
 海以外の方向は完全に山に囲まれている。西側は有名な箱根がそびえ、北は富士へとつづく山嶺、東は標高300mぐらいのゆるやかな丘陵である。これらにぐるりと囲まれた10km四方ほどの足柄平野をさらに分断して、酒匂川(さかわがわ)と早川に仕切られた平地が小田原である。
「フースイから見ても、すごいとこだね」
 最近、すっかり宗教家になった母親が東京から来訪したときに感心していた。当然である。豊臣秀吉の全国統一を最後まで阻んだ天下の名城、小田原城のお膝元。フースイなんて、もう徹底的に調べあげた上で築城しているはずだ。京都しかり、奈良しかり、鎌倉しかり。歴史に鍛え抜かれた町は地の気が強い。