天守閣と向かいあう寝室

 この1週間、7件の仕事を同時に進め、おまけに会社の決算月ということもあって、とにかくいつも追われている。朝刊が届いてから寝床につく日々。寝室は6畳のカーペット間。ここにふとんと寝袋をしいて二人が眠っている。俺はたいがい間に割り込んで眠る。フースイと同じで、両側を守られていないと落ち着いて眠れないのだ。
 娘が2歳ぐらいのときは、真ん中のポジションをめぐって壮絶な戦いなどあったものだが、たいがいは娘が泣きながら端っこに追いやられる結果になった。以来、真ん中は俺の定位置である。
 バルコニーつきのガラス戸からは小田原城天守閣が真正面に鎮座している。賃貸マンションの8階のこの部屋と、天守閣がだいたい同じ高さなので、狭い部屋だがなんとなく贅沢な感じがする。夜10時までは天守閣がライトアップされていて、灯のたえない東海道筋とあいまって幽玄な夜景となる。
 朝6時にはワイフと娘が起きだす。ふとんを片づけてしまうと、部屋にはワイフの小さな鏡台しかない。壁には、DUCATIとKawasakiの2本のレザースーツがかかっている。
 出すために前夜のうちにまとめたゴミ袋が玄関に置いてある。