一本桜を撃ちに行く

 写真機のシャッターを押すことを、英語だとshoot。
 オートバイクに写真機材を積みこんで、山奥の谷にひっそり咲く名もない一本桜を求めての遠征は「狩りに行く」気分だし、道中、たまたま出会った壮麗な山桜をファインダーにおさめてシャッターを切る瞬間などどは、まさに「撃つ(shoot)」という言葉がぴったりだ。
 レンズ単体で重量1kgを越えるバズーカーのような望遠レンズや、カーボンの三本足とマグネシウムの雲台で構成される大型三脚を構えれば、気分はスナイパーである。

●2003年 岡山県の醍醐桜(BMW R-GS1150ADV)



●2004年 福島県三春の滝桜(BMW R-GS1150ADV)


 BMW R-GS1150アドベンチャーは機材を積載するには良いオートバイクだったが、一点だけ、三脚がケース内に入らず、外にくくりつけるしかなかった。桜の季節、遠征の行き帰りは思わぬ雨にたたられることもあり、なんとか三脚を中に納められるオートバイクはないかと思ったものだ。
 そして見つけたのがゴールドウィング1800である。
 契約のハンコをつく前に、「ちょっと待って」と言っていったん家に戻り、三脚を持って出直し、ゴールドウィングのリヤトランクにぎりぎり納まることを確認してから安心してハンコをついた。


 さてあれから5年。
 排気量は15分の1になったが、原付にしっかり三脚を収納して、一本桜を撃ちに行くのである。



●2009年 神奈川県小田原のしだれ桜 (RV125EFI)