人類最強の走る民族「タラウマラ族」

ランニングシューズは、適切に走るための技術を製品化したものだけど、実際にはシューズのせいで足が何かほかの動きをすることになっている。それが原因でけがをする。このことに気づいて、シューズを脱いだら、足の痛みはさっぱり消えたんだ。マラソンラン…

道の駅 全国1005駅のオールカラーガイド

遠征では車中泊がほとんどなので、このガイドブックはありがたい。driver (ドライバー) 道の駅ハイパーガイドブック2013 2013年 06月号 [雑誌]出版社/メーカー: 八重洲出版発売日: 2013/04/17メディア: 雑誌この商品を含むブログを見る

毒カワイイの類似性

川島小鳥のロングセーラー「未来ちゃん」と、奈良美智の「にらみ少女」に共通する毒カワイさ。 毒があってカワイイと思うのは、少なくともその表情にウソがなさそうに思ってほっとする現代日本人の屈折した思考回路があるのだろうか。 未来ちゃん作者: 川島…

魂を掻きたてられぬチャリ小説『走ル』

新聞の書評で「ただ自転車で走るというだけの小説」と見て、ガクゼンとした。 自転車でもオートバイでも自分の足でも、ただ「走る」というだけの純粋性を小説にできるとしたら、と思ってきたが、その方法が見つからないままだ。走ることの純粋性を突き詰める…

『走ることについて僕が語ること』村上春樹

僕の中に新たに生じたもの? ぴったりした言葉が見つけられないのだが、それはあるいは「諦観」に近いものだったかもしれない。100キロレースを完走することによって、大げさにいえば僕は「ちょっと違う場所」に足を踏み入れてしまったようだった。75キ…

潜水艦暮らし

潜水艦暮らしは任務ではない。信仰だ。 (ロシアの潜水艦クルスクの艦長) ロシアの原子力潜水艦クルスクの艦長が艦内に掲げていた標語。 クルスクは2000年8月に事故で沈没。115人の乗組員全員が死亡。しかし実際は艦内で生き残った23人が海底からの脱出を試…

「はだしのゲン」中沢啓治

娘が「はだしのゲン」を読んでいた。 小学校高学年のときに、高知市立図書館に入り浸ってゲンを読んだときのことを思いだしながら、娘もそんな年になったかと感慨深く手に取った。 同じ本だが、ゲンの父親の立場から読んでいる自分があった。父親が戦争反対…

『そのときは彼によろしく』市川拓治

「こういうのをユングならシンクロニシティーって呼ぶんでしょうね」 「宗教家なら神のお導きって言うだろうね」 「私なら、よく出来た偶然と呼ぶがね。実際それが世界を動かしているんだ」 父さんはそう言って、イカのフリットを口に運んだ。 良く出来た偶…

粒子でとらえる「生物」と「渋滞」

「粒子力学」というのだろうか。 生物と無生物の違いはいったいどこにあるのか? ランダムに拡散する粒子(原子あるいは分子)が結びついたもの、という観点から考えると不思議である。 鉱物だって原子という粒子の集まりであり、貝殻だってそうだ。 しかし…

『クワイエットルームにようこそ』松尾スズキ

これは、本格的だ。 今まで「絶望だ」と思っていた出来事のすべてが、「100均」に並んでいるような安物の絶望に思える。今度こそホンモノ。この孤独のコクの濃さ。密度。いやだ。考えるな。ペラペラの現実の尻尾を、つかめ! つかんで離すな! ひゃっひゃひ…

『サクリファイス』近藤史恵

旧友が本を出した。といっても執筆者ではない。 学生時代はいっしょに小説を書いて応募したりしていたが、20年近くたった今、彼は大手出版社の編集者である。 たまたま自転車に関する本だったが、僕は彼が自転車に乗っているところを見たことがない。(学生…

『無花果(いちじく)カレーライス』伊藤たかみ

陽介の父は再婚していた。子供が二人とも男で、かつ妻と別れた場合、なぜか父は父であることを放棄する。一人の男として振る舞うようになる。平気で新しい恋人の話もするし、昔ほど子供の夕食やら進学について気を遣わなくなった。 (『無花果カレーライス』…

『無花果(いちじく)カレーライス』伊藤たかみ

陽介の父は再婚していた。子供が二人とも男で、かつ妻と別れた場合、なぜか父は父であることを放棄する。一人の男として振る舞うようになる。平気で新しい恋人の話もするし、昔ほど子供の夕食やら進学について気を遣わなくなった。 (『無花果カレーライス』…

『女ですもの』内田春菊, よしもとばなな

内田「恋愛で私と同じような性分の人もよく聞くんですけど、彼氏のいない時期がないっていうのが共通点みたいで。二人目の男が現れたくらいのときに、前の人に不誠実なことが起こると、その二人目の人との関係が立ち上がってきて、で、前の人とお別れするっ…

『いい子は家で』青木淳悟

「靴がないことで出かけたと知る」 というのは断ってから外出しないことへの当てつけである。彼はたまにそういう行動を取る。遊びに行くのに「いってらっしゃい」と送り出されるのはどこか心苦しいからだ。 (『いい子は家で』青木淳悟) 『四十日と四十夜の…

『ひとり日和』青山七恵

「吟子さん、外の世界って、厳しいんだろうね。あたしなんか、すぐ落ちこぼれちゃうんだろうね」 「世界に外も中もないのよ。この世は一つしかないでしょ」 吟子さんは、きっぱりと言った。 (青山七恵『ひとり日和』) 歳は離れていても女同士だ。敵対心や…

浸透圧に冒された昼

天井に水面が映り水の夢 浸透圧に冒された昼 (小島なお『乱反射』) 新聞でたまたま知った詩人。その表現に唸った。冒頭の引用は、17歳の女子高生のときの詩である。 20歳、大学生にして初歌集を出した。 噴水に乱反射する光あり 性愛をまだ知らぬわたし (…

『風が強く吹いている』三浦しをん

「長距離選手に対する、一番の褒め言葉がなにかわかるか」 「速い、ですか?」 「いいや。『強い』だよ」 タイトルが素晴らしい。直木賞作家三浦しをんが箱根駅伝を題材に書いた長編小説。 駅伝に関してはまったく無名の大学の、陸上経験者でもない学生を含…

『Water』吉田修一

スタート台から眺めるプールの景色は絶品だ。風が作る小さな波に太陽が反射している。ボクはプールが好きだ。たぶん海よりも好きだ。プールには海が持っているような獰猛なモラルだとか、荒々しい情操がない。一言で言ってしまえば、プールは男らしくない。…

『最後の息子』吉田修一

佐和子とは一年以上付き合っていたのだが、彼女と一緒にいて居心地の良さを感じることは、結局最後までなかった。 彼女はいつも何かを追いかけていた。具体的に何を追いかけていたのかは知らないが、とにかくいつも次へ次へ、上へ上へと目を向けていた。 「…

『八月の路上に捨てる』伊藤たかみ

「あんたみたいなのは三十過ぎてから干上がるよ。包容力ないから。やっぱり大人はそこだわ」 2006年芥川賞受賞作。作者の妻は直木賞作家の角田光代。角田光代も直木賞をとるまえは、何度も芥川賞候補になったように記憶している。 20代のフリーターの既婚男…

『シャカリキ』曽田正人

Wさま 先日の部活動注魂会では、おつかれさまでした。 話題にのぼりました課題図書本、早速ご送付いただき、有難う御座います。 恥ずかしながら、第一巻のしょっぱなからいきなり大量の涙に呑まれた私は、どこか少し精神的におかしくなっているのではないか…

『脳病院へまゐります。』 若合春侑

女は男に泣かされれば泣かされる度、男のやうになつて女を棄てて行くか、もつと女を究めて行くか、少しづつ分かれて行くのかも知れない、誰かもさう云つてゐた。 懐古趣味文体で書かれた極度のマゾ女の告白という体裁。選考委員絶賛で文学界新人賞受賞作とな…

『ブエノスアイレス午前零時』藤沢周

源泉がゴボゴボ噴き出している音を聞くたびに、カザマは死んだ祖父が口にはめていた人工呼吸器の音を思い出したものだが、それすら慣れてしまった。 (藤沢周『ブエノスアイレス午前零時』) 同作で芥川賞受賞。 藤沢周は現役作家男性作家のなかでは、もっと…

『クチュクチュバーン』吉村萬壱

砂煙が晴れ、巨女が倒れた瞬間に取ったM型開脚によって露わになったその性器は巨大な挽肉器として鋭い刃がキュルキュル音を立てていたのである。問題は誰が彼女を満足させる肉棒となるかであったが、こうして彼女が倒れるたびにその恐ろしい挽肉器の前には…

『人のセックスを笑うな』山崎ナオコーラ

オレは昔、かっこよくなりたい、筋肉を付けたい、としきりに考えていたが、今はゆがみたかった。 話題を呼んだタイトルとペンネームで文芸賞デビューをし、同作はそのまま芥川賞候補になった。 タイトルとペンネームの奇抜さとは打ってかわって、作品の内容…

『ミサイルマン』平山夢明

不思議なことだが、こういうことを始めると自分に妙な落ち着きが出てきた。渋滞にはまっても昔のようにイライラしなくなったし、無理な割り込みをする奴がいても自然と譲れるようになっていた。 引用文中、<こういうこと>というのは連続殺人のことである。…

『クローズド・ノート』雫井脩介

「人類は道具を使うことによって進化したのよ。それへのこだわりがなくなったら人類じゃないわよ」 引用を駆使したタイプの小説である。そういえば今回芥川賞を受賞した作品も引用駆使タイプだそうだ。 引越し先のアパートのクローゼットで見つけた、前の住…

『ハリガネムシ』 吉村萬壱

木村氏が抱え持っている黒く汚れたサチコの小さな足裏を見た時、こいつは子どもとの別れを悲しんでいるのではなく自分の非力に絶望しているのだと分かった。健一と健二は口を開けて放心していた。『グレートハンティング』という映画で、ライオンに食われる…

『家族ゲーム』本間洋平

勉強のできる者とできない者、スポーツの得意な者と不得手な者、冗談の上手な者と無口な者、立場の違う者同士が最大に友好関係を保とうとする場合、互に無関心を装い口を利かないという暗黙の了解があったはずだ。 同タイトルの邦画(森田芳光監督)は松田優…